新しい研究によると、蠕虫様卵生両生類は脂質に富んだ乳状の物質を幼生に与えているという。この研究結果は、これまで観察されていなかった行動を報告するとともに、その両生類の子育てと子供とのコミュニケーションについて新たな知見を提示している。脊椎動物では、胚卵黄が母親が子供に与える唯一の栄養投資であることが多い。しかし一部の種では、特殊な食料を作り出して与えるといった育児行動が発達している。例えば、哺乳類における脂質に富んだ母乳の分泌である。栄養豊富な「母乳」の授乳は哺乳類独自の特徴だと長い間考えられていた。しかし、クモなど、哺乳類以外の種の中に、哺乳類の母乳と機能的似た方法で子供に与える栄養を作り出している種が確認されている。Pedro Mailho-Fontanaらは今回、卵生両生類アシナシイモリにおけるこれまで観察されていなかった「授乳」行動を報告している。Mailho-Fontanaは、母親が自分の皮膚を食べさせるというブラジル原産アシナシイモリSiphonops annulatusの独自行動を研究する一方で、子供が母親の総排出腔から分泌された物質を摂取していることも観察した。今回の研究結果によると、S. annulatusは、脂質と糖質に富んだ食料(著者らはこれを「乳」と呼んでいる)を卵管壁内の腺で作り出して1日数回幼生に与えており、しかも、子供からの身体の接触と音によるシグナルに応答しているように見えるという。この種の親子間のコミュニケーションは他のどの両生類にも存在しないことがわかっている。孵化から約2ヵ月間、親は授乳を行い、幼生の急成長に寄与している。関係するPerspectiveではMarvalee Wakeが、「Mailho-Fontanaらの研究によって、アシナシイモリ及び両生類の生態一般について、新たな研究領域が開かれた」と書いている。「また、研究で得られた最も広義での繁殖様式の進化を研究したり、進化生物学の重要側面の理解を進めたりするための、より幅広いアプローチも示された。」
Journal
Science
Article Title
"Milk" provisioning in oviparous caecilian amphibians
Article Publication Date
8-Mar-2024