ムール貝の殻はその二枚貝の一生の間に何十万回も簡単かつ損傷なしに開閉するが、その仕組みはどうなっているのか。そういった耐疲労性材料は、部品が不具合を起こさず繰り返し作動する必要がある電子工学や航空宇宙、組織工学の設計に役立つと思われる。Xiang-Sen Mengらは、二枚貝Cristaria plicataの殻の蝶番部を詳しく観察し、その答えが経時的な脆性破壊に耐える設計と材料の組み合わせにあることを発見した。彼らは顕微鏡観察を行い、その蝶番部が扇子状構造によって特有の性質を実現していることを明らかにしている。扇骨に相当する部分はバイオミネラルであるアラゴナイトのナノワイヤ、扇面に相当する部分はそれより柔らかな有機基質でできている。ナノワイヤは剛性を与えたり蝶番部周囲への応力の分散を促進したりし、アラゴナイト結晶内に発達する双晶面によって強化されている。柔らかな基質は、殻が開閉する際の圧縮応力とせん断応力を吸収する。Mengらはポリジメチルシロキサンポリマーの基質にガラス繊維を織り込むことで、実証実験のための人工版蝶番部を開発した。関係するPerspectiveではRachel CraneとMark Dennyが、この研究結果について論じている。
Journal
Science
Article Title
Deformable hard tissue with high fatigue resistance in the hinge of bivalve Cristaria plicata
Article Publication Date
23-Jun-2023