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ストレスを受けた土壌微生物群集は気候変動に対する樹木の回復力を強化する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

研究者らの報告によると、干ばつ、極端な高温・低温など、多くのストレスがかかる環境から移植された土壌微生物叢は、気候変動に対する樹木の耐性を高めるという。この研究結果は、土壌微生物叢の管理(特に森林再生中の管理)が、気候変動に対する森林の回復力を高める戦略として有益であることを示唆している。気候変動により、多くの種は進化で獲得した環境耐性が通用しなくなっており、絶滅を避けるために順応や適応、移動を余儀なくされている。樹木のように寿命が長い固着性植物種の場合、適応にも移動にも時間がかかるため、気候変動のペースに追いつけない可能性がある。しかし、研究によると、根を取り囲む土壌中の菌根菌など、植物の表面や周囲に生息する多様な微生物の集合体が、環境ストレスに対する植物の耐性を高めるとされている。また、微生物分類群は宿主植物よりも適応が早く、遠くに散らばりやすいため、過小評価されている微生物群集が、気候変動に対する植物群集の耐性の代替源になる可能性があるという。この可能性を評価するために、Cassandra Allsupらは、気温と降水量の勾配に沿って米国北部の12ヵ所から土壌微生物群集のサンプルを採取した。その後、野外実験と制御された温室実験の両方において、この多様な微生物叢を土壌に接種し、さまざまな環境ストレスに対する若木の耐性にどのような影響が出るかを調べた。Allsupらは、特定の気候ストレス要因にさらされた土壌微生物叢は、その特定の条件下において樹木の生存を促進できることを見出した。たとえば、乾燥した環境の微生物叢は、若木の乾燥耐性を改善することができた。接種した微生物種は、3年後も若木の根圏で生き続けていた。著者らは、微生物を介して乾燥耐性が高まるのはアーバスキュラー菌根菌の多様性が高い場合であり、耐寒性が高まるのは菌類の豊富さが低い場合であることを見出した。関連するPerspectiveではMichelle Afkhamiが、「ストレスにさらされたマイクロバイオームが気候ストレスを改善できるという今回の研究結果によって、生態系がもつ回復力への期待は高まるが、土壌微生物群集の積極的な管理を行う前に、気候変動からの回復における微生物の役割を、遺伝子から生態系に至るまで包括的に理解する必要がある」と述べている。


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