一般的な腸内細菌は、Rho因子相分離を利用して哺乳類の腸にコロニー形成する

一般的な共生腸内細菌Bacteroides thetaiotaomicronが、転写終結因子Rhoの相分離を使用して哺乳類の腸でコロニー形成して増殖することが、マウスを用いた新しい研究で明らかになった。この知見は、相分離が、他の重要な腸内微生物にとっても不可欠であり、マイクロバイオームに基づく新しい臨床応用に重要となる可能性があることを示唆している。腸内細菌叢は人間の健康に重要な役割を果たしている。腸の共生コミュニティを操作することで、多くの疾患を治療するための有望な治療法が得られる可能性がある。しかし、この目標を達成するには、善玉菌の腸におけるコロニー形成を可能にしているメカニズムを理解する必要がある。これは乏しい栄養素をめぐる競争での成功や、宿主の免疫系に対する耐性を含む複雑なプロセスである。今回、Emilia Krypotouらが、健康な人の腸内に最も豊富に存在する細菌種の1つで、胃腸障害の治療法候補として現在臨床試験で検討されている種であるB. thetaiotaomicronのメカニズムを検討した。Krypotouらは、細菌の遺伝子転写の調節に不可欠な、高度に保存された転写終結因子Rhoに注目した。しかし、他の細菌とは異なり、B. thetaiotaomicronのRhoタンパク質には、大型の天然変性領域（IDR）がある。Krypotouらは今回、このRhoタンパク質の固有のIDRが、転写終結因子の液-液相分離を可能にしており、腸内のB. thetaiotaomicronの遺伝子調節に重要であることを明らかにした。Krypotouらは、マウスモデルを用いたin vitroおよびin vivo実験により、B. thetaiotaomicronが相分離を介して膜のないコンパートメント内にRho分子を隔離することで、哺乳類の腸環境に対応していることを明らかにした。このIDR依存性分子凝縮はRhoの終結活性を高め、その結果、腸の健康とコロニー形成に必要ないくつかの遺伝子を含む数百の遺伝子の転写が調節されていた。