見つけにくいタンパク質‐代謝物相互作用の発見とその特性分析を向上させる助けとして、研究者らはMIDAS(Mass spectrometry Integrated with equilibrium Dialysis for the discovery of Allostery Systematically)を提唱している。この研究の著者らによれば、MIDASは「タンパク質‐代謝物相互作用における、これまでに知られていない代謝調節機構を理解・利用する」ための強力なツールとなる。タンパク質と低分子代謝物との相互作用は、生物学的相互作用の中でも最も一般的かつ基本的なものであり、タンパク質機能および多様な細胞プロセスの調節にとって不可欠な役割を担っている。しかし、タンパク質‐代謝物相互作用(PMI)の発見とその特性分析は難しく、これまで散発的であった。この問題に取り組むためKevin Hicksらは、見つけにくいPMIを系統的に発見することのできるMIDASプラットフォームを開発した。HicksらがMIDASを使ってヒトの炭水化物代謝における33の酵素と401の代謝物について相互作用を分析したところ、830のPMIが明らかになった。MIDASにより既知の調節因子、基質および産物に関するPMIが特定された一方、同アプローチは多様な代謝経路における多くの未知のPMIを発見することもできた。そうしたPMIには、ATPおよび長鎖アシルコエンザイムによる乳酸脱水素酵素の調節などが含まれていた。著者らによれば、これらの結果は、様々な組織における脂質と炭水化物代謝との間の予期しない生理学的関係の基礎にあるメカニズムを示している可能性があり、がんにおける好気的解糖の薬理的な阻害に利用できるかもしれない。
Journal
Science
Article Title
Protein-metabolite interactomics of carbohydrate metabolism reveals regulation of lactate dehydrogenase
Article Publication Date
10-Mar-2023