生きている組織の中で直接バイオエレクトロニクスを作製する方法が開発され、生きているゼブラフィッシュの脳、心臓、ひれの組織、および単離した哺乳類の筋肉組織内で電極を作ることでこの方法が検証された。著者らによれば、この新しい方法は、神経系やその他の生きている組織内で完全に統合された電子回路をin vivo作製する道を開くものである。「このような技術が長期的な埋め込みに役立つかどうかを判断するには、長期間の安全性と安定性の分析が不可欠であろう。」と、関連するPerspectiveでSahika Inalは述べている。「しかし、この戦略は、生きている全ての組織を電気的物質に変えることができることを示唆しており、この分野を、寿命が長く組織への害を最小限に抑えたシームレスな生物-非生物インターフェースの作製へと近づけている」。柔らかい生物学的な天然組織と接続できる埋め込み型電子機器は、神経系の複雑な電気信号を研究するための貴重な手段となり、神経回路の治療的調節を可能にして様々な疾患や障害を予防または治療することができる。しかし、従来のバイオエレクトロニックインプラントは、繊細な生組織とは適合しない硬い電子基盤の使用が必要なことが多く、装置の電気的特性や長期性能に影響を及ぼしうる損傷や炎症を引き起こす可能性がある。静的な固体電子材料と動的な柔らかい生物組織との不適合を克服することは困難である。今回、Xenofon Strakosasらが、基質を含まないポリマーベースの電子伝導性材料を組織内で直接組立てる方法を発表した。Strakosasらは、組織に注入すると、内因性代謝産物(グルコースおよび乳酸)を用いて有機前駆体の重合を誘導し導電性ポリマーゲルを形成する複雑な分子前駆体カクテルを開発した。この方法を実証するため、Strakosasらは、生きているゼブラフィッシュの脳、心臓、ひれの組織でゲル電極を組織損傷を生じさせることなく「培養」し、また、牛肉、豚肉、鶏肉などの分離された哺乳類の筋肉組織中でも培養した。また、医療用のヒルで、導電性ゲルが、柔軟性のある小さなプローブ上で神経組織と電極をどのように接続できるか明らかにした。
Journal
Science
Article Title
Metabolite-induced in vivo fabrication of substrate-free organic bioelectronics
Article Publication Date
24-Feb-2023