News Release

新たな方法で気候変動に対する氷河の反応を予測した結果、どの程度の気温上昇でも深刻な影響があることが判明

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

政策が関係する様々な気候シナリオで、研究者らは、215,000を超える地球のすべての山岳氷河の今後について予測を行った。この研究は、気候変動に対する氷河の反応の「予測モデルが実質的に一歩前進したこと」を示している。研究者らの報告によると、最も楽観的なシナリオでさえ、全世界で消えてしまう氷河、およびそれに起因する海面上昇は、最新のIPCC報告で発表された数値といった現行の推定値をはるかに上回るという。David Rounce率いるこの研究の著者らは、「いかなる気温上昇も、海面上昇への氷河の寄与、世界各地での氷河消失、水文学・生態学・自然災害の変化といった面で多大な影響を及ぼす」と述べている。関係するPerspectiveではGuðfinna AðalgeirsdóttirとTimothy Jamesが、最近の研究がどのようにして、気候政策に対して国民の支持を煽るには、前向きで日和見主義的な気候変動のフレーミングの方が緊急性や重大性に焦点を当てるより効果が高いことを示してきたかを考察している。AðalgeirsdóttirとJamesは次のように述べている。「この研究の著者らは、行動不足の結果について厳しい警告を発しながらも、重要なメッセージを込めて気候変動のフレーミングを実現している。氷河の大量消失を回避するには遅すぎるが、地球の平均気温の上昇を制限するどのような取り組みも、今後消えていく氷河を減らすことに直接的な効果があるというメッセージである。」

 

氷河融解の速度は過去数十年にわたって上昇しており、これらの脆弱な氷河の消失が続くと、海面上昇、約20億人の淡水入手可能性、氷河に関係する危険リスクに影響が出ると考えられる。氷河の質量減少の予測は今後の地球の気候への適応策と緩和策に欠かせない。しかし、215,000を超える個々の氷河(グリーンランドと南極氷床を除く)が様々な温暖化のシナリオでどう反応するかを総合的に理解するのは依然として難しい。既存の予測は地域規模に限られている上に、氷河の質量減少を左右する主要な自然現象を考慮していない。Rounceらはこれらの制限に対応すべく、新しいデータセットを駆使して、氷河の動態を明確に説明する一連の地球規模の氷河予測を行った。彼らは、地球の個々の氷河すべてについて、2100年までに産業革命前と比べて気温が1.5℃、2℃、3℃、4℃上昇するシナリオで予測を出した。その結果、気温上昇が1.5℃から4℃で、2100年までに2015年に比較して全質量の26±6%から41±11%が消失するという。つまり、地球の平均気温の上昇が1.5℃までという最良のシナリオでも、2100年までに地球の半分もの氷河が消えることになる。COP-26で地球の平均気温は今後100年で2.7°C上昇すると予測されているが、その会議での最新の気候に関する誓約を基にすると、中央ヨーロッパ、カナダ西部、アメリカ、ニュージランドといった中緯度地域の全域でほぼ完全に退氷することが予想される。結果的に、海面上昇に対する氷河の寄与は現在の推定よりはるかに大きいということになる。


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