200年以上にわたる近代農業の拡大と集約化によってヒユモドキ(Amaranthus tuberculatus)が繁茂し、今日の北米で最もまん延する除草剤抵抗性の有害雑草種の1つになった。ヒユモドキの拡大は、自然界ではほとんど見られない選択圧を雑草に対して集中的にかける農業慣行の結果である。Julia Kreinerらはヒユモドキの現代と過去のサンプルをゲノム評価することで、ヒユモドキをここまでまん延させた人為的な遺伝子変異を突き止めた。この結果は、今後の雑草管理戦略にとっての知識として利用できると思われる。200年以上にわたって北アメリカ各地で農業慣行の集約化が急速に進んだことで、隣接地域の多数の非栽培種にとっては極端な環境の変化が起きた。土壌かく乱、水と栄養素の追加、化学農薬と除草剤の散布などである。これらの人為的変化の下で、ヒユモドキのような一部の種 ―― 大豆やトウモロコシといった重要作物と競合し得る雑草 ―― が繁茂した。Kreinerらは、博物館にある1828~2011年に収集された現代のヒユモドキと過去の植物標本から得たゲノムデータを使って、集約農業による環境への特異な影響によって現代のヒユモドキが急速に形成された経緯を説明している。彼らの研究結果によると、ヒユモドキの分布域拡大、成長、環境耐性、除草剤抵抗性に関与する遺伝子の変化が、1960年代と農業が集約化された「緑の革命」期に顕著になったという。関係するPerspectiveではKatherine WaselkovとKenneth Olsenが次のように書いている。「Kreinerらは、ヒユモドキが分布域の移動と以前からある遺伝的多様性の選択によって農業の集約化に適応し、次に、新たな変異によって急速に耐性を進化させたことを示した。 産業規模の農業の機械化がさらに進み、テクノロジーの主導も強化されるにつれ、新たな選択圧によって耕作地での新しい適応と雑草種の登場に拍車がかかるだろう。」
Journal
Science
Article Title
Rapid weed adaptation and range expansion in response to agriculture over the past two centuries
Article Publication Date
9-Dec-2022