すばる望遠鏡に新たに搭載する観測装置、超広視野多天体分光器PFS(Prime Focus Spectrograph)の開発が、現在進められています。このPFSの試験観測が行われ、光ファイバーを通して多数の星からの光を同時に分光観測し、スペクトルを取得することに成功しました。特徴的な観測装置を用いてすばる望遠鏡独自の進化を目指す「すばる2」計画にとっても、大きな一歩です。
すばる望遠鏡に搭載するPFSの開発は、東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)を中心に、国立天文台やプリンストン大学、台湾中央研究院 天文及天文物理研究所(ASIAA)などが参加する国際共同研究チームによって進められています。直径1.3度角の主焦点の視野内に約2400本の光ファイバーが取り付けられ、それぞれが十数マイクロメートルという精度で観測したい星や銀河へ向けられます。2022年9月に行われた試験観測では、これらの光ファイバーが天体に対してどの程度正確に配置できているかが確かめられました。多くの明るい星を使ってずれを修正し配置の最適化を繰り返した結果、装置が天体に対して極めて正確に光ファイバーを配置できたことが確認できました。PFSがエンジニアリング・ファーストライトを達成したと言うことができます。
PFSは、2022年度に始動した「すばる2」計画の主力装置の一つです。すばる望遠鏡の広視野を活用した超広視野主焦点カメラHSCによる撮像観測とPFSによる分光観測で得た大規模な探査データから、ダークマター、ダークエネルギーの正体、多種多様な銀河の形成と進化の物理過程といった宇宙の謎に、より一層迫ることが期待されます。PFSのエンジニアリング・ファーストライトの達成は、「すばる2」計画にとってたいへん大きなステップです。