News Release

古代の制御性遺伝因子がチョウにおける羽のパターンの進化の基礎にある

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

深く保存された古代の多機能的な遺伝子調節因子が、チョウの羽に彩を与える多様なパターンを生み出す上で決定的な役割を果たしていることが、新たな研究により示されている。表現型形質の進化は、ゲノムにおいて遺伝子発現を調節する非コード領域の配列分散を通じて頻繁に起こる。しかし、急速に進化する形質の基礎にある制御システムの進化における経過の特徴を明らかにした研究はほとんどない。DNAのシスエレメント(CRS)と呼ばれる部位に結合する転写因子は、遺伝子発現のオンとオフを切り替え、遺伝子発現がどこでいつ、どの程度なされるべきかに影響を及ぼす。進化の時間スケールにおいて、CREの変異が近傍にある遺伝子の発現を修飾し、こうしてある生物の表現型が調節される可能性がある。チョウの羽のパターンは、こうした進化上の変化の基礎にある発生と遺伝的調節を評価する上で良いモデルとなる。なぜなら、例えばWntAといった、少数のカギとなる重要遺伝子における遺伝子発現のわずかな変化が、極めて近縁の何千種にもわたり羽の色やパターンに変化をもたらす、他のいくつかの遺伝子の発現に影響を及ぼすからであっる。Anyi Mazo-Vargasが、タテハチョウ科の5種のチョウを対象に、46のCREについてATAC-seqおよびCRISPRノックアウトを用いて比較配列解析を行ったところ、こうした羽の基本形式の主要な側面は、深く保存された古代の一連の非コードDNAの配列によって決定されていることが分かった。その結果、この科の一部の種は他の種とはかなり異なる羽のパターンを有するものの、全ての種が、保存されたタテハチョウ科の基本形式を示していることから、同じ制御性要素を有していることが示された。「Mazo-Vargasらは、遺伝子を取り巻く調節機能の働きは長期にわたって安定しているようであるが、CREの喪失または獲得によって、進化上の変化が突然起こる可能性があることを実証している」と、関連するPerspectiveでMarianne EspelandとLars Podsiadlowskiは記している。「CREを操作して表現型の変化を観察するというこのアプローチは、発生生物学において、遺伝子調節に関する他の疑問、例えば無脊椎動物と脊椎動物における身体形式を理解する上で重要な疑問などについて検討する可能性を開くものである。」


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