新たな研究では、物理学に基づく機械学習による新たなアプローチを利用して、研究者らが2つの新しい高エントロピー合金を発見しており、これらの熱膨張率が非常に低いと報告されている。このアプローチは物質の発見及び設計用の強力な新ツールになり得る。新技術の迅速な発展を促進するために、合金を含め、特定の物性を備えた新物質を研究者やエンジニアたちは探求し続けている。おおむね、従来の合金は1種の主たる金属元素で構成され、他の元素が僅かな部分を占めている。より最近では、複数の主要元素を同量結合した合金を研究者らは探求し始めている。これらの合金は、高エントロピー合金(HEAs)とも呼ばれ、これにより物質設計向け合金研究空間が大いに拡大されている。しかしながら、可能な元素組合せ数が多量であるため、価値の有る物性を備えた合金を発見することは非常に難題であり、従来の合金設計法によって簡単に管理できる訳ではない。今回、Ziyuan Raoらは、この事実上無限な設計空間を選り分けて、インバー合金(熱膨張率が非常に低い貴重な合金)を発見する機械学習によるアプローチを紹介している。さらに、わずかなデータを使用して、Raoらは、自身の物理学に基づく人工ニューラルネットワークによって、元素群と合金におけるそれらの集団的物性の間の複雑な関係について学習および予測を行うことができることを示している。使用される訓練データに応じて、熱膨張係数など、合金の特定の物性を研究対象にして、予測することができる。このアプローチを使用して、今回の著者らは、数百万の可能な候補の中から、17種の新たなインバーHEAsを発見した。2種の組成の複雑な高エントロピーインバー合金を実験試験することによって、非常に低い熱膨張係数(温度200Kにおいて2 x 10-6/K)が示されており、これはHEAsに関して現状既知の記録よりかなり低い。「実験データセットが蓄積されるのに伴い、人工ニューラルネットワーク向け最適化モデル開発と共に、合成処理、微細構造及び物性の間の関係の基礎となる物理学に関するより良い理解、普遍的な仮想研究室がいつの日か実現する可能性がある」とQing-Miao HuとRui Yangは関連するPerspectiveにおいて述べている。
Journal
Science
Article Title
Machine learning-enabled high-entropy alloy discovery
Article Publication Date
7-Oct-2022