大気から海洋へ取り込まれる人為起源の二酸化炭素(CO2)が増加したため、世界中で海洋酸性化が起こっている。しかし、Di Qiらによる新しい研究によって、北極海西部ではその他の海域の3~4倍の速さで酸性化が進んでいることが示された。彼らは、この海域で海氷が急速に失われた結果、CO2濃度の低い海水が大気にさらされ、より多くのCO2を吸収したため、酸性化が進んだことを示唆した。Qiらは、1994~2020年に47隻の北極調査船が収集したデータを分析し、海洋酸性化の指標である、海水pHの変化と炭酸カルシウム鉱物アラゴナイトの飽和度を推定した。その研究結果から、北極海西部ではその他の海域よりも酸性化の速度が速いことが明らかになっただけでなく、これら2つの指標と過去26年間にこの海域の海氷が減少したこととの驚くべき相関関係も示された。このまま北極海西部の海氷が減り続けば、酸性化は今後数十年にわたって続き、さらに強まるだろうと研究者らは述べている。また、季節的に海氷が融解する現象によって、大気と海洋の境界面で交換されるCO2が増加することで、南極海でも酸性化が進む可能性があると指摘している。
Journal
Science
Article Title
Climate change drives rapid decadal acidification in the Arctic Ocean from 1994 to 2020
Article Publication Date
30-Sep-2022