1世紀以上にわたって化学者や生物学者の興味をそそっていた「生合成と生態学の謎」を合成する簡潔な方法が発見された。テトロドトキシン(TTX)は一般的にフグが持つ強力な天然の神経毒素であり、神経科学研究における重要なプローブとしても使用されている。今回概要が示された新しい22段階のプロセスは、市販の出発物質から生物学的活性のあるTTXおよびTTX誘導体を製造するためのスケールアップ可能な方法となる。この合成過程を解明することは、TTXの生合成と化学生態学の深い理解にも役立ち、次世代の臨床的鎮痛薬の開発に関する情報を提供する可能性がある。TTXは、最も強力な既知の神経毒の1つであり、フグやタコ、ヒキガエルやイモリなどのさまざまな動物種で認められている。TTXはこれらの種に感染する細菌で生合成され、宿主の体内に蓄積されて、しばしば捕食者に対する防御として利用される。TTXは神経研究でも不可欠なツールとなっている。神経細胞膜における電位依存性ナトリウムチャンネルの選択的遮断薬として、神経回路の中のシグナルの抑制に使用できる。臨床的鎮痛薬としての利用も、進行中の研究テーマである。しかし、TTX分子は複雑で、酸素に富む相互連絡された環を持つ複雑な構造をしており、有機化学者による合成は困難であった。今回、David Konradらが、TXXのこれまでの合成法(最初の報告は1972年)を解析し、いくつかの共通する特徴を明らかにして、別の戦略を探求することにした。そして、グルコース誘導体からTTXを合成する比較的簡潔な方法を発表した。Konradらによると、1,3-双極子環状付加により、これまでのアプローチよりも遅い段階で分子のシクロヘキサンコアを形成できた。22段階のプロセスにより、出発物質からの全体的な収率は合計で11%となった。
Journal
Science
Article Title
A concise synthesis of tetrodotoxin
Article Publication Date
22-Jul-2022