image: Researchers at the Institute of Industrial Science, The University of Tokyo studied the anomalous properties of amorphous solids, including glasses, using computer simulations, and found a common vibrational mechanism underlying them, which may help control the glass properties view more
Credit: Institute of Industrial Science, The University of Tokyo
規則的な構造を持つ結晶の粒子は、低温においては全体の協調性を保ちながら音波(フォノン)として振動することが知られています。一方、乱れた構造を持つアモルファス物質の粒子は、結晶とは大きく異なる振動状態を持つことが古くから知られています。具体的には、ボゾンピークと呼ばれる、ある周波数でピークを持つ過剰な振動状態密度が存在し、それがアモルファス物質の低温における比熱や熱伝導特性が結晶とは大きく異なる原因となっていることが指摘されていました。
田中 肇 東京大学名誉教授(東京大学 先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー)と東京大学 生産技術研究所のフー ユアンチャオ 外国人特別研究員(研究当時)の研究グループは、複数の二次元のアモルファス固体の分子動力学シミュレーションにより、ボゾンピークとして知られる過剰な振動状態の起源が、有限の長さの一次元的なひも状の粒子群の協同的な振動に起因していることを発見しました。これまでは過剰な振動状態密度の起源は、アモルファス物質の硬さが空間的に不均一であることによるフォノンの擾乱(散乱)によるという説が有力と考えられてきました。今回の発見は、従来の説を明確に否定するとともに、新しい機構を提案するものです。また、このような空間的にある程度の広がりを持った協同的な粒子の振動(準局在振動)は、アモルファス状態のある種の構造欠陥に由来したものと考えられてきましたが、今回の発見は、これとは全く別のこれまで知られていなかったタイプの準局在振動モードが存在することを示しています。
この成果は、アモルファス物質の乱れた構造がもたらす、結晶とは大きく異なる物性の基礎的な理解に貢献するだけでなく、アモルファス物質の低温熱物性の制御にも大きく貢献するものと期待されます。
本研究成果は2022年6月6日(英国夏時間)に「Nature Physics」に掲載されます。
Journal
Nature Physics
Article Title
Origin of the boson peak in amorphous solids
Article Publication Date
6-Jun-2022