新たな解析から海洋RNAウイルスの生態学的パターンと役割が明らかに

世界中の水域から収集されたGlobal Ocean RNA配列データセットを用いたウイルスの集団レベルおよび「種」レベルの解析から、これまであまり知られていなかった海洋RNAウイルスの多様性および生態学的痕跡に光が当てられた、と新たな報告で述べられている。この解析結果は、海洋の生態系において海洋RNAウイルスが果たしている重要な役割を明かにしている。ウイルスは生命のあらゆる領域に存在しており、進化、生物多様性、および微生物による生物地球化学的循環の推進力として、不可欠な役割を担っている。地球上の海洋ウイルス集団を解明しようとするほとんどの取り組みは、これまでDNAウイルスに焦点を当ててきた。海洋DNAウイルスは、数が多く、多様で、生態系において重要な役割を果たしていることが知られている。最近の海洋ウイルスシークエンシング研究により、これまで知られていなかった数千種のRNAウイルスが同定されており、その進化の起源や世界的な数の豊富さについて新たな知見が得られているが、世界の海洋RNAウイルスの多様性、生態学、および生態学的役割についてはほとんど知られていない。今回Guillermo Dominguez-Huertaらは、Tara Oceans Expeditionsにより提供されているGlobal Ocean RNA配列データセットを利用して、世界の海洋RNAウイルスの多様性と生態学的痕跡について探索した。その結果によれば、海洋RNAウイルスは主としてプランクトンを含む原生生物や真菌を宿主として感染している。DNAウイルスでも認められたように、RNAウイルスは4つの生態ゾーンに分けられ、これらのゾーンは主として水深と、水深ほどではないが緯度の変化に依存している。さらにDominguez-Huertaらは、RNAウイルスによる海洋生態系への影響が大きいことを明らかにしており、RNAウイルス集団における補助的な代謝遺伝子の存在から、プランクトンによるいくつかの重要なプロセス、例えば光合成や海洋炭素フラックスに影響を及ぼしている可能性が示唆される。

研究の傾向に興味をもつリポーターのために付け加えれば、この研究は2022年4月にScience で発表された、Tara Oceans Expeditionsにおいて収集された約28兆塩基対ものGlobal Ocean RNA配列を評価したResearch Articleを受けたものである。その結果では、それまでに知られていなかった数千もの海洋RNAウイルスが同定され、RNAウイルス進化の早期についての知見が提供されている。https://www.science.org/doi/10.1126/science.abm5847