トウモロコシとコメは経済的に世界で最も重要な作物であるが、両者の栽培化経路を比較した研究者らは、トウモロコシで穀粒列数に関与する遺伝子を特定した。穀粒列数を操作することで、トウモロコシの収量を高めることができた。コメについても、関連遺伝子を操作することで、この主要作物の収量も高められたことが、この研究で明らかにされた。小麦なども含めた様々な穀類作物において、こうした遺伝子の役割を探索することで、生産量の高い新たな食用穀物を開発できる可能性がある、とこの研究の著者らは述べている。トウモロコシとコメは、約10万年前に栽培されるようになった。両種はそれぞれほとんど独立して栽培化されたが、農業的に望ましい多くの形質、例えば栽培の容易さ、穀粒収量の多さ、および栄養価の高さなどが共通しているようである。これらの形質はそれぞれの穀類系統において収束選択を受けたようである一方、この現象が保存された遺伝子によって引き起こされたのかは不明である。もしそのような遺伝子が存在するならば、これらを交配プログラムの標的とすることで、穀類作物の多様性を高めるような開発が可能になると考えられる。このような可能性を評価するため、Wenkang Chenらは、進化における選択シグナルを探すためにトウモロコシとその進化上の祖先であるテオシント(ブタモロコシ)のゲノムを調べ、穀粒数の増大に関連する量的形質遺伝子座(QTL)を特定した。このゲノム領域のファインマッピングを行った結果、Chenらは候補遺伝子としてKRN2の位置を特定したが、この遺伝子はコメに遺伝子ホモログ(OsKRN2)を有している。著者らはこれらの遺伝子が、トウモロコシとコメの両方で穀粒数に対して負の制御を及ぼすWD40蛋白質と関連することを明らかにした。両穀物についての遺伝子編集を用いた実験ならびに比較野外試験によりChenらは、上記の遺伝子をノックアウトすることでトウモロコシおよびコメの穀粒収量がそれぞれ10%および8%増加することを示し、他の農学的形質には明らかな悪影響は認められなかった。これらの結果に基づくと、上記の遺伝子や、収束選択を引き起こす他の遺伝的要素は、新たな穀類作物の開発にとって魅力的な標的となる。
Journal
Science
Article Title
Convergent selection of a WD40 protein that enhances grain yield in maize and rice
Article Publication Date
25-Mar-2022