News Release

知られざる捕食者の役割:ラッコが海底を掘ることがアマモの遺伝的多様性を促進する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、海底で食料を探し回るラッコの個体数回復に起因する物理的撹乱で、海底周辺にあるアマモの遺伝的多様性が高くなるという。この研究結果によって、正しく評価されていなかった、捕食者が遺伝的多様性と生態学的回復力を促進する過程が明らかになった。捕食者が生態系に重大な影響を与え得ることは広く知られているが、関係する知識の大半は、食物連鎖上の捕食者・生物間の栄養相互作用が引き起こした群落構成の変化の確認から導き出されたもので、捕食行動による栄養とは無関係の遺伝的影響、とりわけ捕食者による間接的撹乱が植物群落の遺伝的多様性と進化にどう影響するかについてはよく分かっていない。Erin Fosterらは、アマモ場で日常的に貝類や小型のカニを掘り出すというラッコの採餌行動による物理的撹乱がアマモの繁殖を助ける状況を促し、それによってアマモ群落の遺伝的多様性が高まるという仮説を立てた。彼らは、ラッコが100年以上生息していないアマモ場、最近(この10年以内に)ラッコが再導入されたアマモ場、数十年にわたってラッコが生息しているアマモ場について遺伝子分析を比較することで、アマモの遺伝的多様性はラッコが20~30年生息しているアマモ場が最大30%と大幅に高いことを発見した。Fosterらは、ラッコの生息期間が長い場所ほどその場所のアマモ群落は遺伝的多様性が高いとしている。関係するPerspectiveではJoe Romanが、「Fosterらの研究結果には先見の明がある。生物多様性条約などの国際条約において、遺伝的多様性の保護と監視の必要性は見落とされることが多い。撹乱と種の相互作用が遺伝的多様性に与える影響について研究することで、栄養に関する再野生化の取り組みに情報が得られるだろう」と書いている。


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