アルマ望遠鏡の観測データを用いた研究から、若い連星「おうし座XZ星」を作る双子の星が互いの周りを回るようすが明らかになりました。この研究は、複数年にわたる観測データの解析から天体の時間変化を調べることが可能であることを示しており、「アルマ望遠鏡によるアニメーション」を用いた新たな科学の開拓が期待できます。
宇宙は、2つの星が互いの周りを回る言わば双子の星、連星であふれています。この連星を構成する星は同時に作られますが、若い連星の場合は、それぞれの星の周囲に分子ガスと塵(ちり)から成る原始惑星系円盤が存在し、ここで惑星が形成されることが分かっています。実際に、連星に付随する惑星の検出例も多くなっていますが、連星系においてどのように原始惑星系円盤が形成され、その中でどのように惑星が作られるのかは、いまだに謎に包まれています。この円盤の向きと、2つの星が互いを回り合う軌道運動の面の向きとが、一致しているのかそれとも無関係なのかは、最終的に形成される惑星の軌道面にも影響する大きな問題です。
鹿児島大学の研究チームは、アルマ望遠鏡の観測データが蓄積されているアーカイブを活用して、若い連星であるおうし座XZ星系について調べました。その結果、連星を成す2つの星に付随する原始惑星系円盤が、互いに40度以上傾いていることが明らかになりました。さらに3年間の観測データを解析した結果、2つの星が互いに時計回りに運動していることを発見しました。これは連星の軌道運動を見ていると考えられます。そしてこの連星の軌道運動の面は、それぞれの原始惑星系円盤の面とも、向きが異なっていることも分かりました。つまり、連星を作るそれぞれの星の原始惑星系円盤だけでなく、連星の軌道面を含む全てが、異なる面上にあることが明らかになったのです。
これまでのアルマ望遠鏡による観測でも、若い連星の原始惑星系円盤が互いに傾いている例は発見されていました。しかし、軌道運動を明らかにした上で、連星の軌道面の傾きと原始惑星系円盤の傾きとが異なることが分かった例は、今回が初めてです。この研究により、これまでのような「天体画像」ではなく、「天体アニメーション」を使った新たな研究手法の可能性が示されたことになり、連星の軌道運動のみならず、星から吹き出すジェットの運動や星の明るさの時間変化など、今後さまざまな天体物理学研究に役立つことが期待されます。
この研究成果は、Takanori Ichikawa et al. “Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau”として、米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2021年9月23日付で掲載されました。
Journal
The Astrophysical Journal
Method of Research
Observational study
Subject of Research
Not applicable
Article Title
Misaligned Circumstellar Disks and Orbital Motion of the Young Binary XZ Tau
Article Publication Date
23-Sep-2021