維管束細胞の脂質膜にフロリゲンを温度依存的に隔離することで、寒すぎるときに植物が開花しないようにしていることが、新しい研究で示された。植物がどのようにして温度に反応しているのか、そして外気温が顕花植物の生殖周期をどのようにして操作するのかを理解すれば、気候変動が農業生産に及ぼす影響に関する重要な見識が得られると考えられる。植物は重要な環境の手がかり(日長や外気温など)をモニタリングすることで、生き延びて繁殖する能力を高めていることが多く、この情報を用いて、いつ花を作り生殖プログラムを開始するかなどの成長や発達の段階を調節している。フロリゲン(花の成長を開始させる植物ホルモン)は、日長が長くなったときに葉の細胞で産生される。フロリゲンは植物を通って移動し、茎頂分裂組織で花の発達を誘導する。幅広く保存されているフロリゲンの特長の1つは、脂質に結合できることである。しかし、この機能の目的はほとんどわかっていない。今回の研究で、Hendry Susilaらは、フロリゲンであるFLOWERING LOCUS T(FT)の活性と、細胞内脂質膜がこのタンパク質の輸送をどのように制御し開花のタイミングを調節しているのかを評価した。Susilaらは、顕花植物シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)をモデルとして、FTがリン脂質であるホスファチジルグリセロールに結合し、それによって低温時にフロリゲンを師部細胞内の膜分画に隔離して、寒冷条件下で開花を遅らせていることを明らかにした。この脂質結合は高温ではあまり行われず、植物のシュートにFTが放出されて開花が促される。Yvon JaillaisとFrançois Parcyが、関連するPerspectiveでこの研究とその知見について議論する。
Journal
Science
Article Title
Florigen sequestration in cellular membranes modulates temperature-responsive flowering
Article Publication Date
3-Sep-2021