News Release

新しいディープラーニング手法でRNA構造の予測が大幅に向上

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

ARES(Atomic Rotationally Equivariant Scorer:原子回転同変スコアラー) ―― 計算によるRNA構造の予測を従来の手法より大幅に向上する機械学習手法 ―― が提示された。RNA分子は、タンパク質と同様に、ねじれたり折りたたまれたりして、その機能を果たすために欠かせない複雑な3次元形状を成している。これらの構造を把握することで、非コードRNAなどのRNAの生物学的機能の解明が進むとともに、治療不可能な病気に対する新薬の発見への道も開かれると考えられる。しかし、数十年にわたる取り組みにもかかわらず、RNA構造の実験的解明は困難な状況が続いており、現在分かっているRNA構造はほんの少数にとどまる。その上、機械学習を用いたRNA構造の予測は、タンパク質構造の予測よりはるかに難しい ―― そして、成功率も低い ―― ことが判明している。Raphael Townshendらはこれらの課題に取り組むべく、ディープニューラルネットワークであるARESを開発した。これは、最近実験的に決定されたわずか18のRNA構造のデータを用いた訓練だけで、正確なRNA構造モデルを一貫して作り出すことが可能なニューラルネットワークである。Townshendらによると、研究者らを挙げてのRNA-Puzzles構造予測チャレンジにおいてARESの性能は計算論的手法より大幅に優れていたという。ARESの性能は特筆に値すると彼らは述べている。というのは、ARESは原子構造だけを基に予測することを学習し、塩基対、ヌクレオチド、水素結合といったRNA特有の構造特徴で重要だと考えられるものについての前提は組み込まないからである。ARESはさらに、訓練に使用したものより大きく複雑なRNAの構造も正確に予測することもできた。関係するPerspectiveではKevin Weeksが、「ARESはまだ、原子分解に匹敵するような、もしくは主要な機能部位の特定や創薬努力の指針となれるような水準には達していない。しかしTownshendらは、扱いが難しく変革を起こすような進歩は難しい分野において素晴らしい前進を遂げた」と書いている。


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