電子機器の数が世界中で増加するにつれて、電気電子機器廃棄物(電子廃棄物)を効率よくリサイクルする方法が課題になっています。毎年約5,000万トンの電子廃棄物が発生し、そのうち20%しかリサイクルされていません。残りの80%のほとんどは最終的に埋め立て処理されるため、環境問題が懸念されています。現在、電子廃棄物のリサイクルは、高価なメカニカルクラッシャーやケミカルバス(化学浴)を使用したり、安全上・環境上のリスクが生じる手作業などで行われています。そこで、熊本大学の研究者グループは、よりクリーンで効率的なリサイクル方法を開発するためにパルスパワーを利用した研究を実施してきました。
パルスパワーは、コンクリートから水まで、さまざまな廃棄処理に活用できることがわかっています。パルスパワーを電子廃棄物のリサイクルにも活用できるかどうかをテストするため、研究者らは最もよく出る電子廃棄物の1つであるCD-ROMの分解でパルスパワーの有効性を調べました。これまでの研究では、プラスチックからの金属の完全な分離には、約35 J /パルスで30パルスかかることがわかっていました(現在の東京の電気代で換算すると、この量のエネルギーは100個のCD-ROMのリサイクルに約0.4円かかる計算です)。この方法による材料の分離メカニズムを調べるため、研究者らはプラズマ放電を高速カメラで観察し、シュリーレン法を用いて衝撃波を評価し、シャドーグラフ画像を使って断片的な動きを測定することでさらなる分析を行いました。
放電の初期段階では、青白い色とオレンジの2色の発光が画像で確認されました。これはアルミニウムと表面を保護するプラスチック材料の励起を示しています。プラズマが消散した後、金属とプラスチックの破片がCD-ROMサンプルから剥がれて飛んでいくのを確認することができました。
処理プロセス全体を通して撮影したシュリーレン画像からは、破壊的衝撃波が2つの電極の周りに発生したことが明らかになりました。この衝撃により、電極の先端付近に3.5MPaを超える圧力(馬がギャロップする際に地面に加えるのと同じ量の圧力)が発生し、7.1mmで0.8MPa未満に急速に低下しました。物質が分散する様子が、シュリーレン画像とシャドーグラフ画像の両方ではっきりと観察されました。
研究リーダーのHamid Hosano教授は、次のようにコメントしています。「電子廃棄物のリサイクルは、私たちが直面している重要な課題の一つです。今回私たちは、電子廃棄物のリサイクルにおける材料の除去・分離にパルスパワーを使用する際の衝撃波の重要性を示しました。本研究データは、今後リサイクルプロジェクトの開発に役立つと信じています。」
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本研究成果は2019年4月3日に科学雑誌「Waste Management」に掲載されました。
[Source]
Yamashita, T., Akiyama, H., Sakugawa, T., Hosano, H., 2019. Metal-coated plastics recycling by pulsed electric discharge. Waste Management, 89, pp.57-63. Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.wasman.2019.03.069.
Journal
Waste Management