人の話を聞いているときにピッチ(音の高低)の変化を聞き分ける人間の能力は、単語から意味を引き出すのに不可欠である。今回、こうした相対的ピッチ変化の感知に関与しているニューロンのセットが特定された。ピッチは人間の言語にとって非常に重要であり、まったく同じ単語でもピッチが異なれば意味が違ってくる場合がある。例えば、「Anna likes oranges(アンナはオレンジが好きです)」という文は平叙文にもなるし、文末付近でピッチが変化すれば「Anna likes oranges?(アンナはオレンジが好きですか?)」という疑問文にもなる。人間はピッチの聞き分けが得意なので、移調した場合でも音楽のメロディーを認識できる。今回、Claire Tangらは相対的ピッチの聞き分けに関与しているニューロンのサブセットについて報告している。彼らは、痙攣発作に苦しむ10人の患者(患者らは脳活動をモニターするインプラント機器を埋め込んでいる)について、神経活動を調べた。彼らは患者に対して、イントネーション曲線、音声内容、話者の性別(男性か女性か)がさまざまに異なる合成音声を聞かせた。そのデータから、まったく異なる文がまったく同じピッチパターンで発せられた場合に、同じ反応をする脳領域が明らかになった。また、男性と女性とではピッチが絶対的に違う場合が多いため、はっきり異なる神経反応が見られた。その後、患者に男女数百人が話した文を聞かせ、相対的に高いピッチと低いピッチにそれぞれ同調する脳領域を検出した。全体では、イントネーションを記録する45個の電極うち38個が、絶対的ピッチよりも相対的ピッチによってより良好に予測された、と著者らは報告している。
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