野生のヒヒの群れが意思決定のプロセスを共有している証拠が発見された。これにより、強力で優勢な支配層が存在する種においてさえ、民主主義が特定の社会集団の行き先や行動を導く集団行動や集団決定に内在する特性だと考えられるという結論が支持された。これまで、階層が確立された霊長類やオオカミといった動物は民主主義的プロセスを通して合意に至っているのか、もしくは、その決定は支配力のあるリーダーが行っているのかという点に関心が寄せられていた。Ariana Strandberg-Peshkinらは、ケニアのンバラ(Mpala)研究センターで、25頭の野生のアヌビスヒヒに特別設計のグローバル・ポジショニング・システム(GPS)機能の付いたカラーを付け、一秒ごとにヒヒの居場所を記録し、ヒヒらの互いに連動しあう動きを分析した。そのデータによると、特定のヒヒらが先導者となっており、先導者であるヒヒらは他のヒヒから離れるように動き始め、他のヒヒに「後を追わせる」、もしくは自分たちが戻ってくるまでその場で「待たせる」かしている。Strandberg-Peshkinら研究チームは、ヒヒは多数のヒヒが先導者となり、先導者らの行き先が特定の方向に一致する時は後を追う傾向が強いことを発見した。しかし、どこに行くかについて先導者らの意見が分かれているときは決定が遅れるという。ヒヒは2つの行き先の角度が90度より大きい場合はそのうちの1つを選択するが、2頭の先導者がそれぞれに示す方向の角度が90度以下の場合は妥協を図ろうとすると、Strandberg-Peshkinらは述べている。これらの研究結果は野生のヒヒにおける社会的地位とリーダーシップの間の重要な差異を強調するものであり、群れの間で共有される民主主義に基づく意思決定は高度に階層化された社会的階級を持つ種の間にも広がっていることを示している。
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Article #15: "Shared decision-making drives collective movement in wild baboons," by A. Strandburg-Peshkin; I.D. Couzin at Princeton University in Princeton, NJ; D.R. Farine; M.C. Crofoot at University of California, Davis in Davis, CA; D.R. Farine; M.C. Crofoot at Smithsonian Tropical Research Institute in Balboa, Panama; D.R. Farine at University of Oxford in Oxford, UK; I.D. Couzin at Max Planck Institute for Ornithology in Konstanz, Germany; I.D. Couzin at University of Konstanz in Konstanz, Germany.
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