参加者28例を対象とした第2相臨床試験において、亜酸化窒素(一般には笑気ガス)による1時間の単回治療により、治療抵抗性うつ病の症状が数週間にわたり改善し得ることが示されている。濃度25%の笑気ガスでも治療効果があることを示したことで、今回の結果は、低濃度の亜酸化窒素がクリニックでのうつ病の治療に有用であり、副作用のリスクが低いことを示唆している。亜酸化窒素吸入は、歯科および内科の診療において鎮痛剤として一般的に用いられているが、他方で笑気ガスはうつ病の治療候補として注目されてきた。以前の研究では、標準的な抗うつ薬で効果が得られない重度のうつ病である治療抵抗性大うつ病に対して、亜酸化窒素に顕著な抗うつ作用があることが示されている。しかし、この先行研究では、24時間を超えての治療効果について評価が行われておらず、また濃度50%の亜酸化窒素が用いられており、これは悪心などの副作用を引き起こし得る高い濃度である。今回Peter Nageleらは、治療抵抗性うつ病患者28例を対象に、25%という低濃度の亜酸化窒素の安全性と有効性を検討した。3ヵ月間にわたり、患者はプラセボ、25%亜酸化窒素、および50%亜酸化窒素のいずれかを用いて1時間の吸入を行う連続3回の治療セッションを受け、各セッションには4週間の間が置かれた。25%および50%亜酸化窒素を用いたセッションにより、患者の約85%でうつ症状の顕著な改善が認められ、改善は最長4週間持続した。しかし、25%亜酸化窒素によるセッションでは、鎮静、悪心、および軽度離人症などの有害作用のリスクが4倍低いことも示された。より大規模な患者集団を対象とした研究が必要であるが、Nageleらは、治療効果が得られた患者では、うつ病スコアの平均低下が、従来の抗うつ薬を用いたこれまでの試験でみられた低下よりも大かったと指摘している。
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Journal
Science Translational Medicine