カルシウムイオン電池(CIB)は、理論上、リチウムイオン電池(LIB)の二倍の容量を示すため、LIBを超える次世代電池として注目を集めている。この容量の違いは、可動イオンに1価、2価のイオンを用いている違いによる。またCIBは、カルシウムの埋蔵量がリチウムに比べて多いことや融点が高いことから、LIBよりも低価格、高安全性な電池であることが考えられる。しかしながら、CIBの実現にはまだ問題点がある。それは、カルシウムイオン(112 pm)がリチウムイオン(76 pm)よりもイオン径が大きいために、カルシウムイオンを可逆的に挿入・脱離できる電極材料が少ないことが挙げられる。
そこで本研究では、図1に示すように、大径のイオンを挿入・脱離することが可能とされるプルシアンブルー(PB)およびプルシアンブルー類似体(PBA)をCIB電極に採用した。現在までにカルシウムイオンと同程度のイオン径であるナトリウムイオンを用いて、PBA電極の電気化学特性が有機電解液中・無機電解液中で評価されており、ナトリウムイオンの可逆的な挿入・脱離が確認されている。
東城友都助教らの研究グループは、ナトリウムイオンの代わりにカルシウムイオンを用いて、カルシウムイオンがPBAに可逆的に挿入・脱離するかどうかを調査するため、PBA電極の性能評価を行なった。図2 (a)に示す通り、その充放電特性から40-50mAh/gの可逆容量を確認した。また図2 (b)に示す通り、3サイクル以降のクーロン効率*は約90%で一定となった。 図2の結果から、可逆容量は理論容量の半分程度ではあるが、クーロン効率すなわち、サイクル性能は優れていることが確認された。このサイクル性能は何に起因しているのかX線回折(XRD)およびX線光電子分光法(XPS)により調査を行なった。その結果、PBAの壊れにくい構造と良好な電荷バランスに由来していることが判明した。
本研究ではCIBに最適な電極材料として、プルシアンブルー(PB)およびプルシアンブルー類似体(PBA)を提案したが、PBA電極の可逆容量の向上については、更なる研究が必要である。今後は、LIBを超えるCIBの材料研究を引き続き進めていく予定である。
*クーロン効率
クーロン効率は、充電容量(カルシウムイオン脱離量)/放電容量(カルシウムイオン挿入量)から求められる百分率で、この数値が100%に近い程、電池容量の損失が少ないことを示す。
ファンディングエージェンシー:本研究は文部科学省・科研費・挑戦的萌芽研究No. 15K13947の一部および、文部科学省・科研費・基盤研究(B) No. 24360109の支援を受けて遂行された。
論文情報: Tomohiro Tojo, Yosuke Sugiura, Ryoji Inada, and Yoji Sakurai, Reversible Calcium Ion Batteries Using a Dehydrated Prussian Blue Analogue Cathode. Electrochimica Acta, 207, 22-27 (2016).
Digital Object Identifier (DOI): 10.1016/j.electacta.2016.04.159
研究者情報: http://researchmap.jp/tj1010/?lang=english
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Journal
Electrochimica Acta