太陽系の惑星のうち、水星、金星、地球、火星は、主に岩石から成る「岩石惑星」と呼ばれます。岩石惑星のうち、水星は特に密度が高く、火星は密度が小さいことが知られています。金属と酸化物の密度に基づき、密度が高い惑星ほど金属核が占める質量比が大きいとされてきました。しかし、この密度の多様性の起源はこれまでよくわかっていませんでした。
東北大学大学院理学研究科地学専攻のWilliam F. McDonough教授(メリーランド大学カレッジパーク校 兼務)と、吉崎 昂(研究当時:博士課程後期3年、日本学術振興会特別研究員)は、岩石惑星の化学組成のモデル化と、太陽系の岩石天体の密度の多様性に基づき、これらの天体の密度差は原始太陽由来の磁場によってもたらされたとする説を発表しました。この説によれば、水星表層の化学組成や、小惑星も含めた太陽系内の岩石天体の密度分布など、従来の説では説明できていなかった課題が包括的に説明できます。
地球上で人類が生活できるのは、金属核が生み出す磁場のおかげで有害な宇宙線が地表に到達することが妨げられるためです。すなわち、惑星がハビタブル天体(注1)となるためには、その金属核の大きさや化学組成が重要な役割を果たしているといえます。本研究で提案された説と、将来の探査ミッションによる水星や金属小惑星の観測結果を組み合わせることで、天体の金属核の形成進化過程に関して、さらなる新知見が得られることが期待されます。
本研究成果は、7月2日付でProgress in Earth and Planetary Science誌にてオンライン公開されました。
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Journal
Progress in Earth and Planetary Science