敗血症から血管を守る抗体が、マウスが敗血症で死亡するのを防げることが新しい研究で示された。これまでに成功しなかった敗血症の治療である病原体や体の炎症反応を狙いとした既存の治療法ではなく、今回のアプローチでは患者の血管反応を目標とする。さらには通常の治療用抗体とは異なり、この抗体は、普通は有害なタンパク質を保護的なタンパク質に変換することで機能する。現在、敗血症に対する特異的な治療はない。世界中で毎年1900万人が敗血症に罹患しており、敗血症は入院患者の死亡の主因となっている。敗血症では、感染症に対する非常に大きい免疫反応に起因する体中の炎症が生じる。特に血管炎症は、血管を破壊して血液を漏出させ、臓器不全と敗血症性ショックを引き起こしうる。血管内部を裏打ちしている内皮細胞で発見された受容体であるTIE2が、敗血症の重要な治療標的であることが明らかになっている。この受容体は、血管炎症および漏出に対する内皮のバリアを補強する。しかし、TIE2を促進するまたはANG2(この受容体を遮断する分泌タンパク質)を阻害する既存の化合物は、部分的にしか有効でないか、臨床用途としては実用困難なことが示されている。Sangyeul Hanらは、ANG2と結合し、ANG2とTIE2の両方を阻害するのではなく活性化する複合体を形成する特殊な抗体を開発した。この抗体は、複数のマウス敗血症モデルで、通常のANG2遮断抗体よりも良好に生存期間を延長した。Hanらの抗体と抗菌薬を組み合わせると、細菌感染による敗血症時の生存はさらに促進された。実験では、この抗体が血管を安定化し、バリア機能を強化し、全身炎症を鎮めたことが示された。この知見は、この抗体を、敗血症の治療法候補として、そして血管漏出が関与する他の病気(エボラ出血熱、マラリア、炭疽病など)の治療候補として使える可能性を示している。Samir Parikhによる関連したFocusで、さらなる見識を述べる。
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Journal
Science Translational Medicine