現代のメラネシア人は、古代ネアンデルタール人およびデニソワ人から受け継いだ、ほとんどのヒト集団にみられない、正の選択を受けた遺伝子をコードする適応性遺伝子バリアントを有することが、新しい研究で示された。古代の祖先から遺伝子移入した大規模な構造的バリアントが、近代のヒト集団の適応に重要な役割を果たした可能性があり、現代の大規模遺伝的変異の正当に評価されていない源(ゲノムの中でまだ特性決定されていないもの)であることを、この結果は示唆している。アフリカから広大なユーラシア大陸に移住してきた先祖集団は、遭遇した多種多様な環境に適応する必要があった。また、遭遇した旧人の祖先との交配も行った。しかし、適応および進化における、旧人と解剖学的現代人の間の遺伝子交換の役割は依然として明らかになっていない。一塩基バリアント(SNV)を用いた遺伝子調査から、SNVが古代の遺伝子移入および適応に寄与していることが示唆されている。しかし、SNVと比較して、大きな形式での構造バリアントであるコピー数バリアント(CNV)は、遺伝子型発現と関連している可能性がはるかに高く、強力な選択圧を受けている。ただし、ヒトの進化および現代人の遺伝的変異における遺伝子移入したCNVの適応的役割は検討されていない。PingHsun Hsiehは、メラネシア人ゲノムにおいて選択的に古代に遺伝子移入したCNVのエビデンスに関するゲノムワイド検索を行った。メラネシア島民は、知られている最大量の古代の人類の祖先遺伝子をいくつか有している。Hsiehらは、現代のメラネシア人ゲノムにおける正の選択に関連する、ヒト族が共有している層別化されたCNVを発見した。さらにこの結果から、それぞれデニソワ人およびネアンデルタール人に由来する、染色体16p11.2および8p21.3での適応的CNV遺伝子移入のエビデンスが明らかになった。この結果は、旧人からのCNV遺伝子移入によって、有益な遺伝的変異の源が提供され、現代人が新しい環境に適応できた可能性があることを仮説的に示唆している。
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