イオン液体は、常温で液体として存在する塩であり、高い化学・熱安定性、不揮発性、難燃性、イオン伝導性などの特質から電気化学や材料技術の分野で注目を集める素材です。同研究グループはこれまでに、イオン液体と高分子を組み合わせて固体化し応用性を高めたイオンゲルを開発し、さらにイオンゲルのゾル-ゲル相転移など、その粘弾性に変化を起こす分子の組み合わせや分子挙動を研究してきました。
今回、同研究グループは、イオンゲル中のアゾベンゼン基をポリマー鎖ではなくイオン液体の構造に導入することで、アゾベンゼンの光異性化に伴いゾル-ゲル転移が引き起こされることを見出しました。この混合液はUV照射時にゲル状となり、可視光照射時はゾル状に変化します。このシステムでは、アゾベンゼンは光応答性の分子スイッチとなり、アゾベンゼンがポリマー側ではなく溶媒側の構造変化をもたらすことから、これまで課題であったゾル-ゲル転移の構造変化の制御が容易になりました。
今回開発されたゲル材料の分子デザインの手法は、他の熱応答性ポリマーにも応用可能であることから、このような素材を用いた高強度・高寿命な新しいコーティング材料や医療用の人工材料の開発が進むことが期待されます。
本研究成果は12月8日付でAngewandte Chemie International Editionにオンライン発表されました。
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Journal
Angewandte Chemie International Edition