科学者らは、量子もつれ(量子エンタングルメント)を増強するプロトコールを開発し、2メートルの距離にわたりその有効性を確認した。この進歩は、およそ20年前に最初に開発されたエンタングルメント蒸留と呼ばれる技術の実証に成功したものである。量子もつれという物理現象は、複数の粒子がある距離にわたり相関する、あるいは「リンクする」現象で、確実な伝達、量子計算および量子シミュレーション、ならびに計測学の強化にとって重要な意味をもつ。しかし、粒子と環境の間の不可避な相互作用によりエンタングルメントが乱される可能性があり、これを考慮し修正しなければならない。この課題を克服するため、Norbert Kalbらは2つのダイアモンド片を用いた。これらダイアモンド片はそれぞれ、「伝達」量子ビットとして用いられた窒素‐空孔電子スピンと、「記憶」量子ビットとして用いられた近傍の炭素13核スピン(このタイプの記憶量子ビットは光学遷移の影響を受けない)を含んだ。最初に、伝達量子ビットを生のエンタングル状態におき、次いでこれを記憶量子ビットにスワップさせた。伝達量子ビットの最初の生の状態が記憶量子ビットに投射されたら、自由に別の生の状態になることができる。記憶量子ビットは、伝達量子ビットから獲得した最初の状態を失いやすいため、研究者らはメモリー粒子をリアルタイムでモニタリングする方法を開発した。この研究チームは、伝達量子ビット間のエラーを考慮および補正することが可能になり、各反復におけるエンタングルメントを増強することができた。
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