ヒト白血病におけるTP53変異の包括的機能解析により、ミスセンス変異がp53腫瘍抑制タンパク質に新たな癌を発現させる機能を付与するという現在の仮説(主にマウスの研究に基づく)に異議が唱えられるかもしれない。その代わりに、新しい研究で、これらの変異が「ドミナントネガティブ」効果を示して野生型p53の癌抑制活性を低下させることが示唆されている。TP53は、腫瘍抑制タンパク質p53をコードする遺伝子であり、ヒトの癌で最も高頻度で変異している。全癌タイプのこのような変異のほとんどはミスセンス変異であり、これによって全般的な作用が不明な、機能のないまたは機能不全のタンパク質が生じうる。全タイプの癌でp53変異が圧倒的によく生じていること、そして何十年も有力な支持研究が行われていることから、p53ミスセンス変異が発癌性の機能獲得(GOF)を介して腫瘍抑制因子を腫瘍プロモーターに変換していることが広く示唆されている。この結論は確立されたものとなっているが、p53の癌への関与についてはまだ議論が行われている。p53変異の機能的意義をより深く理解するため、Steffen Boettcherらは、ヒト骨髄性白血病のTP53変異の徹底的な分析を行った。Boettcherらは、CRISPR/Cas9を用いて最も頻度の高いp53ミスセンスバリアントの特徴を持つアイソジェニックな白血病細胞株を作製した。驚くべきことに、このアイソジェニック解析(ならびに包括的な変異スクリーニング、マウスのin vivo実験、及び臨床データの解析)では、ミスセンス変異により不完全なp53タンパク質に新たな癌原性機能が付与されるという見解を支持するエビデンスを得ることはできなかった。その代わりにBoettcherらは、p53ミスセンスバリアントのドミナントネガティブ作用(DNE)、すなわち白血病で変異していないp53の腫瘍抑制作用を低減させる作用が主要な役割を果たしていることを発見した。関連するPerspectiveで、David Laneが、新しい結果と過去の研究の知見を調和させることのできる方法について述べる。
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