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新しい堆積物記録から北大西洋深層循環の不安定性が明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、気候が将来さらに温暖化すれば、現在の想定よりも大規模、急激、かつ頻繁に海洋ベンチレーションが変化する可能性があるという。現在の気候評価では、北大西洋深層水(NADW)のベンチレーションが乱れると地球規模の気候に深刻な影響が及ぶことは認識されているが、それが転換点となる可能性は低いというのが一般的な考えである。今回の研究結果は、温暖気候においてNADWは安定しているという長年の考え方を見直す必要性と、温暖気候における急激な変化を(固有の変動特性ではないにしても)起こりうる変動特性だとみなす必要性を示唆している。大西洋子午面循環(AMOC)とNADWのベンチレーションは、大気中のCO2および熱の分布・貯蔵をはじめ、大西洋全体の気候パターンを調節する際にも重要な役割を果たしている。過去数回の氷河時代における深層循環に関して、これまで行われたモデル化研究やプロキシ再構築では、温暖な間氷期には比較的安定していることが示唆されていた。Eirik Galaasenらは新たに高精度の海洋堆積物記録を提示している。この堆積物はグリーンランド南端沖の海底から採取したものであり、50万年にわたる深層循環が記録されている。コアサイトにおける堆積速度が速いことを利用して、著者らはAMOCとNADWの変動を100年以下の精度で評価することに成功した。Galaasenらは、温暖な気候の間氷期においても、NADWの安定性の乱れが比較的頻繁に起こったことを見出した。重要なことに、この結果は、海洋循環における大きな乱れがこれまで考えられていたよりも容易に引き起こされることと、そうした乱れが起こった過去の気候条件が将来予想される気候条件に似ていることを示している。関連するPerspectiveのThomas Stockerによると、こうした転換点やその危険性に関して包括的な評価が欠けているという。「確固とした実用的な情報を政策決定者や一般の人々に提供するためには、これをIPCCの第7次評価サイクルの優先事項にすることも必要である」と、Stockerは述べている。

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