今回の特集(special issue)ではニュー・ホライズンズ計画に関する5つの新しい研究を取り上げるが、その結果報告によると、冥王星の表面には多種多様な地形があるという。準惑星である冥王星とその大きな衛星カロンとは、類似点よりも相違点のほうが多い。さらに、一連の研究により、冥王星は周りにある太陽風プラズマやエネルギー粒子と相互作用を起こし、周囲の宇宙環境を変化させていることが明らかになった。これらの結果は今後、多くの詳細な冥王星研究への道を開くものである。NASAのニュー・ホライズンズ計画では、2015年7月14日に歴史的なフライバイ(接近通過)を行ない、その際に冥王星とその衛星カロンから集めたデータのダウンロードを続けている。このデータが地球に届くと、科学者らはそれを処理し研究する。今回5本ある一連の論文のうち、1本目の論文ではJeffrey Mooreらが、冥王星とカロンの多様な地質学的特徴について初となる記述を行なっている。彼らは、冥王星にある地殻変動・氷河流・大きな水氷塊の移動・広大な丘の痕跡について報告している。これらは氷の火山が存在した結果だと考えられるという。地形変動に関するデータは、この準惑星では浸食に似た過程によって表面が頻繁に新しくなっていることを示唆しており、過去数億年のあいだに活発な地形形成過程があったことを示している。カロンでは最近こうした過程は活発ではなく、起伏の激しい北側と平坦な南側に分かれており、冥王星よりも古いクレーターや地溝が見られる。2本目の研究では、Will Grundyらが氷に覆われた冥王星とカロンの表面について、色と化学組成を分析している。彼らの報告によると、冥王星表面の大半を占める揮発性の氷(水氷や固体窒素など)は複雑な分布をしており、これは、さまざまな季節的および地質学的時間スケールで地形形成過程が表面に作用した結果であるという。冥王星には「ソリン」とよばれる赤褐色の分子が一面に積もった地域がいくつかあることを研究は示唆している。3本目の研究では、G. Gladstoneらが冥王星の大気を調べたところ、予想以上に低温・高密度で、多数の広大なもやの層が存在した。4本目の研究では、Harold Weaverらが小さな衛星ステュクス、ニクス、ケルベロス、ヒドラを調べたところ、これらは不規則な形をしており、高速で自転し、表面が明るかった。最後に、Fran Bagenalらは、太陽風との相互作用やこの系に塵が少ないことなど、冥王星が周囲の宇宙環境に及ぼしている変化について報告している。総合すると、冥王星のフライバイから得られたこれらの研究結果は、惑星の進化過程のさらなる理解に道を開くものといえる。
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