News Release

多孔性シリカ材料で画期的な抗マラリア薬のドラッグデリバリーシステムを開発

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

A Drug Delivery System Made from the Porous Silica Material MCM-41

image: Kumamoto University researchers found that using MCM-41 as a drug delivery system for malaria treatment produced a highly efficient treatment in animals. Clinical trials are planned in the near future. view more 

Credit: Shinya Hayami

ドラッグデリバリーシステム(DDS)は、体内に届ける薬物の量や時間を制御する薬物伝達システムです。これまでに、数多くのDDSの研究が行われてきましたが、そのほとんどは癌治療に関するものでした。

また現在までの直接飲用するマラリア治療では、主に次の3つの問題点がありました。1.抗マラリア薬が胃の中でほとんどが分解されること、2.副作用が強いこと、3.体内に留まる時間が短い。このため、抗マラリア薬としての治療効果が高くないという欠点がありました。

多孔性シリカ材料の「MCM-41」は2~30 nmの細孔径を有する材料です。その細孔に薬物を取り込むことができるため、DDSに用いることができます。熊本大学の速水教授らは、抗マラリア薬のDDSとしてMCM-41を用いることができるのではないかと着想して研究を行いました。

MCM-41を用いた抗マラリア薬のDDSの実験として、MCM-41に抗マラリア薬であるアルテスネートとキニーネを取り込ませ、in-vitro(試験管での実験)およびin-vivo(動物実験)の実験を行ったところ、以下の知見を得ました。

    ・抗マラリア薬のリリース時間が一週間以上と非常に長くなり、長時間作用させることが可能となった。

    ・動物実験において、MCM-41に抗マラリア薬をそれぞれ取り込ませたDDSが、アルテスネートを直接飲用する場合と比べて20倍、キニーネの場合では240倍もの治療効率が上がった。 (ここで言う治療効率とは、薬効の強さの指標となる「50%有効量」であり、値が小さいほど薬の作用が大きい、つまり少ない量で効果が得られるため治療効率が高いことを意味している。)

    ・薬物を取り込んだMCM-41そのものは、非毒性かつ非活性であり副作用が非常に弱いということが期待される。

研究を主導した速水教授は次のようにコメントしています。

「今回の抗マラリア薬のDDSの研究成果は、世界で初めて高効率なマラリア治療の可能性を示唆する結果となり、今なおマラリア治療が必要な地域での実用化が期待されます。今後は抗マラリア薬DDSのマラリア治療に向けて、臨床実験などを見据えた展開や抗HIV薬DDSの展開を行っていく予定です。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Scientific Reports」に平成30年2月15日掲載されました。

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[Source]

Amolegbe, S. A., Hirano, Y., Adebayo, J. O., Ademowo, O. G., Balogun, E. A., Obaleye, J. A., … Hayami, S. (2018). Mesoporous silica nanocarriers encapsulated antimalarials with high therapeutic performance. Scientific Reports, 8(1). doi:10.1038/s41598-018-21351-8


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