バクテリアが強力な温室効果ガスであるメタンを生成する過程が、研究者らにより解明された。メタンを生成する微生物は現在世界で最も重要なメタンの放出源であり、毎年数億トンのメタンを大気中に放出している。微生物によるメタンの合成反応は、エネルギー利用に向けてメタンの生成・利用技術を開発する上で重要な意味合いを持っており、その反応機構の背景にある酵素、メチル補酵素M還元酵素（MCR）の特定は科学者の間で長年懸案となっていた。ニッケル原子あるいはフリーラジカルのどちらかを伴う過程がメタンの合成反応を促進すると考えられてきた。しかし、その反応速度の速さから解析前に反応中間体が消滅してしまうため、ニッケル原子とフリーラジカルのどちらが反応に関わっているかを特定することは非常に難しいとされてきた。また、反応中のニッケル原子は酸素に非常に敏感な状態であることも特定を難しくしてきた要因である。今回、Thanyaporn Wongnateと共同研究者らは化学物質を利用して反応速度を遅らせ、さらに冷凍技術を利用してフリーラジカルがメタン合成反応の鍵となることを特定した。Thomas LawtonとAmy Rosenzweigは関連するPerspectiveにおいて、「反応中間体の特定により20年以上続いた議論に終止符が打たれ、MCR機構を一致して構築する段階に入った」と語っている。
###
Journal
Science