News Release

糖を運ぶタンパク質の挙動を可視化

II型糖尿病発症のメカニズムに迫る

Peer-Reviewed Publication

Osaka University

Figure: Sugar Chain

image: When the functional sugar chain is connected to GLUT4, it imports glucose. When the abnormal sugar is attached to GLUT4, it will be rapidly internalized into the cell after a quality check at plasma membrane. view more 

Credit: Osaka University

大阪大学大学院工学研究科の菊地和也教授らの研究グループは、タンパク質の細胞内動態を可視化する新手法を開発することで、グルコース輸送を担う糖タンパク質GLUT4に結合している糖鎖[1]の役割を明らかにしました。

GLUT4はその機能を阻害すると?型糖尿病発症の一因となることが知られています。GLUT4は、インスリン刺激時に細胞膜に移行し血中のグルコースを細胞内に取り込むことで、血糖値を低下させる役割を担っています。近年、GLUT4に結合している糖鎖がGLUT4の細胞内動態において、どのような役割を果たしているかが注目されていました。

同グループは、GLUT4が細胞膜に移行したとき蛍光プローブ[2]によりGLUT4を光らせる新しい技術を開発しており、この技術を用いることで、謎とされていたGLUT4に結合する糖鎖の役割を世界で初めて解明しました。

今後、GLUT4の膜局在化機構の解明に加え、糖尿病の発症機構の解明と新しいタイプの治療薬の開発に繋がるものと期待されます。

本研究成果の内容

本研究で開発した蛍光プローブは、タンパク質と結合することで初めて蛍光強度を上昇させる機能を持っています。また、蛍光プローブが細胞膜非透過性であるために、細胞膜に出てきたタンパク質のみを標識することができます。これらの機能のおかげで、細胞膜に移行したGLUT4のみを蛍光プローブにより迅速に蛍光標識し、明瞭にGLUT4の細胞膜移行痕跡を蛍光検出することができます。これまでは、蛍光タンパク質や免疫染色などの手法を用いてGLUT4の動態解析が行われてきましたが、細胞の中に存在するGLUT4が細胞膜へ一旦移行したことがあるかどうかの痕跡を厳密に調べることができませんでした。本研究で開発した技術を用いることで、GLUT4の細胞膜移行の痕跡を正確に判別できるようになりました。言い換えますと、細胞膜に短時間局在した証拠を記録することを可能としました。本研究では、この新しいイメージング技術を用いて、GLUT4の糖鎖形成を阻害したときと糖鎖が欠失したときのGLUT4の細胞内動態に与える影響を調べました。その結果、糖鎖に異常のあるGLUT4は細胞膜へ移行するものの細胞膜へ留まることなく細胞の中に戻っていくことが分かりました。以上より、糖鎖がGLUT4を細胞膜へ引き留める役割を果たしていることが分かりました。この結果は、細胞内での局在とその機能の痕跡を示す上記技術の開発・応用によって初めて証拠を示すことが可能となりました。

社会に与える影響

GLUT4は、インスリン刺激により細胞膜へ移行しその局在を維持させ、血中のグルコースを取り込み血糖値を低下させる役割を担っています。GLUT4の膜局在の維持に関わる仕組みの破綻は、血糖値を低下させる仕組みが働かなくなるため、?型糖尿病の発症の原因となる可能性が指摘されています。このため、本研究成果は、GLUT4の膜局在化機構の解明に加え、糖尿病の発症機構の解明と新しいタイプの治療薬の開発に繋がることが期待されます。

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用語解説

※1 糖鎖
複数種の糖がつながった生体高分子。タンパク質や脂質などの生体分子と結合する。

※2 蛍光プローブ
プローブは元々探針という意味だが、転じて蛍光プローブは、特定の分子と反応することで強い蛍光を発したり蛍光色を変えたりする機能性分子を指す。


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