組織工学と再生医療を組み合わせて、科学者らは宿主細胞を取り込んで再生し、経時的に成長する一連の心臓弁を作製した。これらの心臓弁を成長期にある仔ヒツジに移植したところ、数年間にわたり拡大してその機能を維持したため、うっ血性心疾患を有する小児において長期の心臓弁置換を行うという差し迫ったニーズに対応できる可能性が示唆された。こうした患児は生存のために機械的(人工)心臓弁に依存することになるが、現行のデバイスは多くの場合、時間が経つと石灰化し、成長する患児の心臓に合わせて大きくならない。その結果、こうした患児は人工弁を再留置するため、成人に達するまで定期的に5回もの開胸手術を受けることになる。こうした手術はかなりのリスクと治療費を伴い、患児は生涯にわたり抗凝固療法を受けなければならない。Zeeshan Syedainらは、自分らの以前の研究に基づいて、成長する心臓に合わせて拡大して細胞層に生着する小児用人工弁を作製した。組織工学の手法を用いて、脱細胞化した細胞外マトリックスを利用して、そこに移植後に細胞が生着できる3本のチューブから成るTri-Tube人工弁を作製した。第一世代のTri-Tube人工弁は、4匹の仔ヒツジに移植した後に52週間にわたってチューブ径が増大したが、一部血液の逆流が生じ、弁機能が経時的に低下した。そこでSyedainらは、チューブ・スリーブを1枚追加した第二世代デバイスをデザインし、これにより第2群の仔ヒツジ2匹において弁の成長が改善し、血圧低下が軽減した。重要なこととして、移植した仔ヒツジでこれらの人工弁は、臨床使用されている生体弁よりも機能を低下させる石灰化の徴候が少なかった。著者らは、2種類のTri-Tube人工弁デザインの長期有用性を評価するために、より規模の大きなコホートを用いた研究が必要であると主張している。
###
Journal
Science Translational Medicine