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福島事故から東京へ降下した放射性セシウムの主要化学形態~ガラス状微粒子への濃集~

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Goldschmidt Conference

福島原発事故の数日後、拡散した放射性物質が東京都心に降り注いだ。これらの放射性物質は、これまでにつくばなど各地で検出されている不溶性ガラス状微粒子「glassy soot」に沈着していることが分かっており、そのほとんどが雨や流水に溶けることなく、除染などで物理的に取り除かれるまで環境中に留まっている。この粒子には、放射性セシウムが濃集されており、粒子の拡散による環境への影響は未解明である。このことに関する研究成果が、横浜のゴールドシュミット会議で発表される。

東日本大震災で発生した津波によって、福島第一原子力発電所(FDNPP)から134Cs(半減期:2年)と137Cs(半減期:30年)を含む大量の放射性物質が放出された。

九州大学宇都宮聡准教授の率いる研究グループは東工大、ナント大学、スタンフォード大学と共同で、FDNPPから230 kmの東京都内から採取された大気エアロゾルサンプルを分析した。セシウムは水溶性であるため、そのほとんどが雨水中に溶けて拡散したと予測されていたが、最先端顕微鏡技術と浸漬実験により、大部分がメルトダウン時に形成されたガラス状微粒子に取り込まれた状態で地表に降り注いだということが明らかになった。

この研究の結果、放射性セシウムは、ケイ酸ガラスに取り込まれた状態で、Fe-Znを主とする酸化物とともに粒子を形成していることがわかった。このケイ酸ガラスは、FDNPPの1号機または3号機の格納容器内で起こったメルトダウンした炉心と周囲のコンクリートの反応によって形成されたと考えられている。これらの微粒子は~1 μmの大きさしかないが、高濃度のセシウムが含まれており、放射線量は1グラムあたりに換算すると4.4×1011 Bqとなっている。これは福島の一般的な土壌1グラムあたりのセシウム放射線量の107~8倍という高い放射線密度になっている。

この研究ではさらに、微粒子の構造分析によって、事故当時の原子炉内での状況の一部が明らかになった。温度が2200K以上に達した核燃料は圧力容器を溶かし、原子炉内に放出された放射性セシウムはナノ粒子を形成した。その後、セシウムナノ粒子はFe-Znナノ粒子及びコンクリート由来の気体と反応し、ケイ酸ガラスのナノ粒子となって拡散された。

2011年3月15日に東京で採集したエアフィルターを分析した結果、放射能の80~89%は高濃度セシウム含有微粒子によるものであり、これまでに想定されていた水溶性セシウムよりも大きな割合を占めることが分かった。

宇都宮聡博士の談話:

「この研究によって、これまで福島の事故による放射性降下物に関して私たちが仮定していたことが少し違っていた、ということが明らかになりました。当初から行っていた、表層土の洗浄および除去、という手順は、正しかったと思われます。ただ、放射性セシウムは微粒子に濃縮されていることがわかったことで、環境中におけるこのような微粒子の挙動を含めたセシウム移行挙動や、この微粒子による健康影響に関しても考慮する必要が出てきた、と言えるでしょう。」

フランス・ナントのSUBATECH研究所の所長であり、東海村の国立研究開発法人日本原子力研究開発機構・先端基礎研究センターの界面反応場化学研究グループ長であるバーナード・グラムボウ教授のコメント。「最先端のナノ界面科学装置による観測は極めて重要です。このような観測は、福島の事故が起きた原子炉から東京への放射性セシウムの長距離大気輸送についての我々の理解を変化させる可能性があり、しかし、一方では人間に吸入されるセシウム微粒子の吸入線量を評価する方法にも変化をもたらす可能性があります。実際のところ、不溶性のセシウム粒子の生物学的半減期は、水溶性のものに比べてより長いと思われます。」

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Professor Satoshi UTSUNOMIYA utsunomiya.satoshi.998@m.kyushu-u.ac.jp
Professor Bernd Grambow Bernd.Grambow@subatech.in2p3.fr
Goldschmidt Press Officer(日本語対応可): press@goldschmidt.info


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