News Release

衛星時代前のプラズマ環境を推定

1958年頃と1970年頃はプラズマの重さが約2倍に?

Peer-Reviewed Publication

Kyoto University

An optical magnetometer used at Kyoto University

image: An optical magnetometer used at Kyoto University. A Japanese team have digitalized magnetogram recordings taken before direct observations by satellites became available. The analog recordings, taken for 72 years since the early 20th century, provide a window onto space weather in the mid-1900s and shed light onto future patterns of plasma movement in near-earth space. view more 

Credit: Masahito Nose

気象衛星ひまわりや放送衛星(CS/BS)が飛翔している地球周辺の宇宙空間は、真空ではなく、荷電粒子からなるプラズマで満たされています。このプラズマ環境は、ちょうど地球上で大気環境が暑くなったり寒くなったり蒸し暑くなったり乾燥したりするのと同じように、大きく変化することが分かっています。現代では、こうした「宇宙の天気」を調べるために、科学衛星が多数打ち上げられています。

しかし、人工衛星の時代が幕を開けたのはスプートニク1号が打ち上げられた1957年からで、定常的にプラズマの環境が計測され出したのは1960年台半ばから後半以降でした。それより昔の時代にプラズマ環境を直接観測したデータはないので、何らかの方法で推定するしかないというのが実情でした。将来的に、地球周辺のプラズマ環境がどのように変わっていくかを理解するためには、昔の環境を知ることが重要になります。

今回の研究では、地上で古くから計測されてきた地磁気(地球の持つ磁場)の変化を記録したデータを利用して、1956年から1975年のプラズマ環境、特にプラズマの重さがどのように変化しているかを推定することに世界で初めて成功しました。古くは地磁気の観測は、磁石を細い糸で吊り下げ、光を反射させて印画紙に記録していました。本研究では、地磁気の観測を行っていた気象庁地磁気観測所の増子徳道氏と共同研究を行い、(1)紙の記録をスキャナーで電子画像に変換する、(2)電子画像から線を自動的に読み取ってデジタルデータを作成する、という2段階でデジタルデータ化を行いました。これにより、科学衛星による観測が一般的になる以前の1956-1975年の地磁気の変動をコンピューターで扱えるようになりました。

次に、地磁気の振動現象を選び出し、その振動数から宇宙空間のプラズマ環境の推定を行いました。この原理は、パーティグッズで使われるヘリウムガスを吸い込むと声が高くなるという現象に似ています。つまり、普段の声は声帯で空気を振動させた時の音ですが、空気の重さの約7分の1のヘリウムガスを吸い込むと音速が速くなるので、ヘリウムを含んだ空気の振動数が高くなり、声が高くなるという仕組みです。プラズマが軽ければ、地磁気の振動数が高くなり、プラズマが重ければ、地磁気の振動数が低くなることになります。これによると1964年ごろと1975年ごろは、プラズマはほとんどすべてが水素イオンでできていたが、1958年頃と1970年ごろは、7-10%程度の酸素イオンが混じっており、全体の重さとしては2倍以上に変化していたことが明らかになりました。

本成果は6月11日、アメリカ地球物理学連合が発行するJournal of Geophysical Research誌に掲載されました。


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