キラル分子には2つの形体があり、構造が同一だが、一方が他方の鏡像になっている。最新の研究により、宇宙空間においてキラル分子が初めて発見されたことが報告された。生物系では、ある型のキラル分子が別の型より圧倒的に多く使用される傾向があるため、キラル分子に関心が集まっている。ここで、キラル分子とは右手と左手のような関係にあるものと考えることができ、同じような構造をしているが、逆向きのため交換不能である。このように、最初から、ある型のキラル分子が別の型より圧倒的に多く使用される理由は分かっていないが、宇宙空間でキラル分子が発見されたことにより、重要な手掛かりが得られるかもしれない。研究者のBrett McGuire, P. Brandon Carrollらは、電波を使用して、射手座B2(N)において酸化プロピレンと呼ばれるキラル分子の存在することを発見した。射手座B2(N)は、質量が太陽の約300万倍のガスおよび塵の星雲であり、天の川銀河の中心に位置している。Brett McGuire, P. Brandon Carrollらは、生物段階前の星間分子を観測するために米国グリーンバンク電波望遠鏡(GBT)において行われたPRIMOSプロジェクトおよび豪州パークス天文台の電波望遠鏡から得られたデータを使用して、酸化プロピレンが存在することを発見した。今回のキラル分子は、射手座B2(N)のガス星雲内の高温中心部ではなく、射手座B2(N)の低温外縁部で発見された。射手座B2(N)の低温外縁部では、別の有機化合物も発見されている。これらの成果から、重要な新種の分子が宇宙空間に存在することが立証され、キラル分子の起源について手掛かりが提供された。
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