未来はもう始まっている。そのひとつが、粒子を拾い上げて別の場所に運ぶことができるDNAでできた小型ロボットである。この進歩そのものが高度な科学の表れであるが、同様の技術は幅広い用途に利用できる。例えば、こうしたロボットは化合物の組み立てや回路内のナノ粒子の再配置などに利用可能である。ロボットを作るために、Anupama J. ThubagereらはさまざまなDNA鎖を組み立てて、2つの足が生えた1本の「脚」や、荷物を1個運べる2本の腕などを作った。ロボットはDNA折り紙の2次元の通路に沿って移動する。一時に通路に固定できる足は1つだけである。従って、1つの足が通路に付いているあいだ、もう1つの足は浮いている。ロボットが通路に沿って不規則に歩いていくうちに、運ぶ予定の物体に遭遇する。すると、今回の場合はフルオロフォア(蛍光色素分子)またはDNA鎖がロボットの腕に結合する。ロボットはあてもなく移動を続け、ついにゴールのDNA鎖に遭遇する。研究者らは、ゴールのDNA鎖がロボットから荷物を自動的に奪い取るように設計した。ロボットはその後、折り紙表面の別の場所を自由に探索し、荷物に遭遇するとそれを拾い上げる。著者らは、個々のロボットの運搬成功率が80%であることを見いだした。この小さなロボットは1歩進むのに5分かかり、1歩で6ナノメートル進むことができる。著者らは、ロボットが荷物を運ぶのに要する時間は、一本鎖でできた「しっぽ」をロボットに複数付けるか、またはDNAによってプログラムされたタンパク質モーターを使うかすれば、劇的に短縮できると示唆している。関連するPerspectiveでは、John H. Reifがこの研究について論じている。
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