50年分のデータを分析したところ、気候変動の影響で河川の洪水時期が欧州全域で変化していることがわかった。この研究結果から、欧州大陸の西部および北東部では初春に、北海周辺および地中海沿岸の一部地域では晩春に河川の洪水が起こっていることが明らかになった。河川の洪水は他のどの自然災害よりも世界中の多くの人々に影響を及ぼしており、地球全体の年間平均損失額は推定で1040億米ドルになる。この額は、経済成長と気候変動が続くことによって増加すると予想される。今回Günter Blöschlらは、欧州38か国にある4,200か所以上の水文観測所から、1960~2010年のデータを集めて分析した。また、降水量、土壌水分、気温のデータも比較し、洪水時期の変化を促進している可能性があるものを探った。最大の変化が見られたのはポルトガルから英国にかけての北大西洋沿岸の欧州西部であり、この地域では50%の観測所で50年間に少なくとも15日は洪水の時期が早まった。著者らは、こうした変化はおもにこの地域の地質(特にその保水能力)に起因すると考えている。欧州北東部のほぼすべての観測所でも、洪水時期の早まりが記録されており、約半数の観測所で8日を超える変化が見られた。こうした変化は気候温暖化による雪解け水の増加がおもな原因である。北海周辺では、約半数の観測所で8日を超える洪水時期の遅れが記録されており、著者らは、これは冬期の極端な降水量と北大西洋振動の変化に起因すると考えている。関連するPerspectiveでは、Louise J. SlaterとRobert L. Wilbyが、「対応しなければ、このような洪水時期の変化によって、農業生産高、インフラの安全性および運用、水力発電量、給水、水管理に多大な影響が出る可能性がある。このように、この研究の結果として洪水予測に関する数々の重要な疑問が提示される」と述べている。
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