News Release

何が合金をガラスになりやすくしているのか

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

A Theory as Clear as Glass

image: Scientists at The University of Tokyo use computer simulations to model the effects of elemental composition on the glass-forming ability of metallic mixtures, which may lead to tough, electroconductive glasses view more 

Credit: Institute of Industrial Science, the University of Tokyo

東京大学 生産技術研究所の田中 肇 教授(研究当時、現:名誉教授/シニア協力員)、フ― ユアンチャオ 特任研究員の研究グループは、複数の原子種からなる混合系が結晶化しやすいのか、ガラス化しやすいのかを、どのような物理的な因子が支配しているのかについて、分子動力学シミュレーションを用いて研究を行った。近年、金属のガラス状態を比較的容易に形成することが可能になり、金属ガラスの応用範囲が急速に広がってきた。しかしながら、どのような金属原子をどのような比率で混合するとガラスになりやすくなるかという問題は、物理的には未解明であり、その結果、これまで金属ガラスの設計は主に経験則に頼って行われてきた。

本研究グループは、分子動力学シミュレーションを用いて、異なるガラス形成能を持つ3つのモデル金属系について研究を行った。その結果、これらの系の結晶化の駆動力には大きな差はないこと、一方で、液体と結晶の界面張力は大きく異なることを見出した。また、これらの液体のダイナミクスにも大きな差がないことから、これらの系のガラス形成能の違いは、液体・結晶間の界面張力によって支配されていることが明らかとなった。さらに、界面張力は、液体中に自発的に形成される構造的な秩序とその構造内の原子組成によって決定されていることを明らかにした。また、界面張力は、結晶の核形成を支配しているだけでなく、結晶成長にも大きな影響を与えることを示した。これらの事実は、古典的な結晶化理論には重大な欠陥があり、これまで考えられてこなかった液体中に形成される局所的な秩序の効果をあらわに考慮する必要があることを強く示唆している。

この発見は、金属合金のガラス形成能や相変化メモリーのスイッチング速度を、経験に頼ることなく、物理的に制御するための新しい指針を提供するとともに、結晶化という様々な物質に普遍的に見られる現象の基礎的な理解にも大きく貢献するものと期待される。

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本成果は2020年12月11日(米国東部時間)に「Science Advances」のオンライン速報版で公開される。

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