コオバシギという鳥は、北極圏にある繁殖地の温暖化にともなって体が小さくなっている。しかし、この渡り鳥が気候に起因する小型化によって不利益を被るのは、比較的気候が安定している熱帯の越冬地に到着してからである。Jan van Gilsらが行った新しい研究によると、小型のコオバシギほどくちばしが短いため、熱帯の砂の中にいる栄養価の高い軟体動物にくちばしが届かず、代わりに栄養価の低い軟体動物や海草を食べて生きていかざるをえない。その結果、北極圏が暖かかった年に生まれたコオバシギの生存率は下がる。気候温暖化にともなって小型化する動物はコオバシギだけではない。コオバシギの雛は、北極圏のツンドラがとけた後に現れる虫の「ブルーム(大量発生)」を主要な食料源としているが、気候変動のせいでこのブルームが早まり、コオバシギの孵化の時期と一致しなくなっている。Van Gilsらは33年にわたって渡り鳥のコオバシギを研究した結果、北極圏が暖かく食糧不足の年に生まれた鳥は、くちばしが短い状態で西アフリカの越冬地に到着するため、入手可能な望ましい餌の3分の1しか掘り出すことができないことを確認した。コオバシギの繁殖地では雪解けがどんどん早まっており(1年に約半日の割合で早まっている)、こうした温暖化はコオバシギ以外の移動動物の存続にも影響を与えかねないという。関連するPerspectiveでは、Martin WikelskiとGrigori Tertitskiが、この新しい「地球生態系の危険信号」の意味するところについて論じている。
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