パプアニューギニア(PNG)の人々を対象とした遺伝子解析から、高地と低地に居住する人びとの間で、10,000~20,000年前から遺伝子において明確な分離が生じていたことが示された。この分離は、人びとが島内で植物を栽培し始めた時期とほぼ一致して生じており、このことから、新石器時代の生活様式への移行によって集団構造が影響を受けたことが示唆される。パプアニューギニアは、人類のアジアからオーストラリアへの移動において足掛かりのような役割を果たしたという事実を考えると、集団の遺伝学と考古学の両方の観点から、その集団構造は非常に興味深い。しかし、現存する人類の集団から得られるサンプルは概して限られている。今回Anders BergströmらはPNG全域の85の言語グループに属する381人について遺伝子型決定を行い、また以前に生成されたカバー率の高い39の全ゲノム配列の分析も行った。これらのデータから、高地居住者とセピック地域の低地居住者は10,000~20,000年前に分かれ、高地集団における分離は全て後半の10,000年間に生じたことが示唆される。青銅器時代や鉄器時代といった歴史的出来事にみられる人類の技術革新や移動は、それぞれ東ユーラシアとアフリカにおいて遺伝的多様性を促進し、その特徴としてY染色体系列の急速な拡大が挙げられる。しかし、著者らはPNGのデータにはそのことを示す所見を見つけていない。いずれにしても、高地集団と低地集団は驚くほど高度の遺伝的分化を示している。そこで著者らは、PNGで観察された遺伝的分化は、技術により促進される大規模な拡大なしに、人類の定住社会が達成できた遺伝的、言語的、文化的多様性の結果としてもたらされた可能性があると提唱している。
###
Journal
Science