News Release

平板に衝突した滴の濡れ面積が新理論で予測可能に!

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Water Droplet Impacts on Silicone Rubber

image: Time progresses from the left image to the right image, where the far-right column of images represents drops exhibiting maximum spreading. (a) release height of the droplet z=10 mm, (b) z=100 mm, (c) z=700 mm. view more 

Credit: Assistant Professor Yukihiro Yonemoto

平らな固体物質の表面上に衝突した液滴の濡れ拡がり面積を、定量的に予測する理論式を導き出すことに日本の研究者らが成功しました。固体面上に衝突する液滴の挙動は一見単純そうですが、固体表面の粗さや液体の流体運動、固体と液体表面間の濡れ性(液体の付着しやすさ)等といった様々な要素が影響し合い、複雑な様相を呈します。これまで世界中の研究者が実験、理論や数値解析的観点から濡れ拡がり面積の定量予測に挑んできましたが、衝突速度が遅い領域の予測は実現できていませんでした。

固体表面への液滴の衝突は、インクジェット、自動車エンジンのインジェクターやスプレー冷却など数多くの工業分野にとって重要な現象です。衝突後の液滴の最大濡れ拡がり面積は、製品の質や装置の効率を大きく左右する重要なパラメーターの一つです。

液滴の最大濡れ拡がり面積は、液滴の性質や、液滴がぶつかる速度、固体の性質でも異なります。例えばぶつかる先がガラスかテフロン加工の素材かでも最大濡れ広がり面積が異なってきます。濡れやすいか、はじきやすいかといった液体の付着しやすさは、濡れ性によって異なるのです。固体表面上に付着した液滴の濡れ性は、簡単には、接触線での水平方向の力学的バランス式(ヤングの式)を考慮して計算されます。垂直方向の要素は、固体との反力により釣り合うとされ無視されてきました。

従来の衝突液滴の最大濡れ拡がりに関する理論検討では、主に接触線の水平方向のバランス式のみを考慮したものが多く、広範囲の衝突速度条件での液滴最大濡れ拡がり面積を予測する関係式はありませんでした。典型的には、衝突速度が速いときと低いときの2パターンに特化した計算式がありますが、それぞれ衝突速度が速い場合を予測する式では速度が遅い範囲で誤差が生じ、衝突速度が遅い場合を予測する式では速度が速い範囲で誤差が生じるといった欠点がありました。

熊本大学と京都大学の研究者らは、今まであまり検討されてこなかった接触線での垂直方向の表面張力に着目しました。さらに、固体表面上に衝突する液滴のエネルギーバランスについても検討しました。その際、衝突時の液滴内部で生じる流体運動によるエネルギーの粘性散逸に関する従来法の取り扱いの欠点を見直すことで、新しい理論式を導出しました。

新しく導かれた理論式は、シリコンゴムや超撥水基板といった様々な種類の固体基板と液滴間の衝突時の最大濡れ拡がり面積を定量的に予測できる可能性を示しました。さらに、ミリサイズの液滴だけでなくマイクロサイズの液滴へも適用できることも確認しました。

「近年、インクジェット技術を用いた半導体基板のナノスケールの回路作成技術が注目を浴びています」と、研究を主導した熊本大学の米本テニュアトラック助教は言います。「ところが、ナノスケールの現象の観察には高額な実験装置が必要になり、また、数値解析による予測では専門的な技術を必要とします。本研究の成果は、簡易的な方法で衝突後の液滴の最大濡れ拡がり面積を予測できるため、効率的な回路設計等の実現が期待できます。」平らな固体物質の表面上に衝突した液滴は安定的に濡れ拡がるだけでなく、例えば、衝突の際のエネルギーが大きければ衝突した液滴はより細かい液滴に分裂します(スプラッシュ現象)。熊本大学と京都大学の研究者らは、今回の成果をさらに拡張するためにこうした現象も考慮できる理論の構築に現在取り組んでいます。

本研究成果は、イギリスのオープン・アクセス・ジャーナルScientific Reportsに日本時間平成29年5月24日掲載されます。

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[Citation]

Yukihiro Yonemoto and Tomoaki Kunugi. Analytical consideration of liquid droplet impingement on solid surfaces. Scientific Reports, 2017. DOI: 10.1038/s41598-017-02450-4


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