14頭の古代のウマのゲノムの解析により、家畜化によってもたらされた重大な選択圧が明らかになり、人間の最も忠良なる乗り物であるウマの遺伝的多様性が比較的最近失われたことが示された。ウマの家畜化は、カザフステップでボタイ文化により約5,500年前に開始されたと考えられているが、それより早かったという説も遅かったという説もある。しかし、保存状態が十分な古代のウマの化石がないため、この家畜化の中心的時期以降の種の遺伝的変化の研究は困難である。今回、Pablo Libradoらは、古代の家畜化されたウマ(ロシアの現代のチェリャビンスク州で約4,100年前に生きていた1頭の雌馬、約2,700年前にシベリアの墓でいけにえにされた2頭の雄馬 、カザフスタンの遺跡で約2,300年前にいけにえにされた11頭の雄馬)のゲノムを検討した。これらの結果から、飼育者による選択圧がかかり、前肢の幅が広がり、手根骨がよく発達し、毛色の種類が豊富になったことが明らかになった。同様に、筋肥大と短距離走の能力に関連した遺伝子変異が生じたことも明らかになった。また、乳汁分泌の増加に関連する遺伝子バリアントが検出されたことから、人がミルクを渇望していたことが古代のウマゲノムに顕著に認められた。家畜のウマは少数の雄馬の子孫であるという説とは逆に、本研究で解析されたゲノムからY染色体の多様性が大きいことが明らかになり、多くの雄馬が最初の家畜のウマの父親となったことが示唆された。最後に、この解析結果に基づき、Libradoらは、現代のウマに多数認められている有害な変異が、早期に家畜化された結果ではなく、最近の約2,300年間の品種改良の結果であると考えられることを示唆している。
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