波長が100マイクロメートル程度のテラヘルツ電磁波は、分子の構造や機能を調べるのに適しています。しかし、これまでの集光法による観測では、波長に比べて極めて小さい(1ナノメートル以下)1個の分子を測定することは不可能でした。
今回、東京大学 生産技術研究所 光物質ナノ科学研究センターの平川 一彦 教授、物質・材料研究機構 エネルギー・環境材料研究拠点の濱田 幾太郎 主任研究員(現 大阪大学 准教授)を中心とする研究グループは、原子1個程度の隙間を持つ電極を作り、その隙間に分子1個を捕らえた「単一分子トランジスタ構造」を作製し、この金属電極をテラヘルツ電磁波に対するアンテナとして用いることにより、1分子のテラヘルツ計測を行うことができるようになりました。
この方法を用いて、1個のC60(フラーレン)分子が超高速に振動している様子を観測することに成功しました。さらにC60分子に電子を1個注入することによる分子振動スペクトルの微細な変化も観測することができました。
遺伝子やタンパク質の分子レベルの構造や機能の解析、分子レベルの情報に基づいた医薬品の開発など、物理、化学、生物学、薬学などの基礎から応用に関わる広い分野に大きな発展をもたらすと期待されます。
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Journal
Nature Photonics