80年以上前から、水素はある特定の条件下では金属特性を示すだろうと予測されてきた。今回、研究者らはこの現象の実証に成功した。理論上、金属水素は物理学領域における重要な多くの特性(高温超電導や超流動など)をもつとされ、エネルギー問題の解決に有益な影響を与えると考えられている。1935年、E. WignerとH. B. Huntingtonという2人の科学者が、25ギガパスカル(GPa)の圧力をかけると水素分子は原子状金属になると予測した。WignerとHuntingtonによる仮定の一部が間違いだとわかった一方で、水素を圧縮して金属にすることが驚くほど困難であることが判明していた。そしてついにRanga DiasとIsaac F. Silveraが、5.5ケルビンで465からほぼ495GPaの間という、当初の予測より20倍近い高圧で水素の金属化に成功した。簡単な計算に加えて分光計測を行うには、水素が標準的な分子(H2)状態から解離して原子状金属になっている必要がある。著者らは最近の理論に基づいて、金属相はおそらく固体だろうと考えているが、固体状態と液体状態を識別できるような実験的証拠は得られていない。それでもやはり、今回の前進は80年以上をかけて達成された業績と言える。「差し迫った課題は金属水素を急冷することであり、もしそれに成功すれば温度安定性を研究して、大量生産する方法があるかどうか確かめなければならない」と、著者らは締めくくっている。
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