ハダカデバネズミは、フルクトース(果糖)を変換して生命維持に不可欠な組織の燃料にすることで、酸素がない状態でも(最高18分まで)生き延びる能力がある、ということが新しい研究によって明らかになった。ハダカデバネズミはこうした条件下に置かれると、好気呼吸を中止し、フルクトースを基質とする解糖に移行する、と著者らは報告している。この研究結果は、心臓病や脳卒中に伴う組織損傷の防止策を立てる際に役立つ可能性がある。ハダカデバネズミは地下に大きなコロニーを形成して生活しているので、地上の生物よりも酸素濃度が低くて二酸化炭素濃度が高い状況に耐性がある。この齧歯類が組織損傷を受けずにこうした離れ業をやってのける仕組みについて理解を深めるため、Thomas J. Parkらは酸素が欠乏した条件下でのハダカデバネズミの反応を調べた。酸素が0%の条件下ではマウスは20秒で死んだのに対して、ハダカデバネズミは意識を失ったものの、空気に触れると数秒以内に呼吸を再開し、神経や行動に異常をきたした様子もなくコロニーに戻った。研究者らは、ハダカデバネズミが完全な酸素欠乏状態に最高18分まで耐えることができ、悪影響が長引くことも一切ないことを証明した。次に、ハダカデバネズミのさまざまな臓器について、酸素欠乏中の代謝を分析した。その結果、フルクトース濃度が、糖の輸送を助けるタンパク質の濃度と共に、ハダカデバネズミの脳や心臓で増加したことを、著者らは見いだした。さらなる実験を通じて、マウスの心臓や脳とは異なり、ハダカデバネズミの脳と心臓はフルクトースによって機能することを確認した。関連するPerspectiveでは、Jay F. StorzとGrant B. McClellandがさらなる詳細を説明している。
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